2022 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking the Concept of Agency: From Hegelian Point of View
Project/Area Number |
19K12925
|
Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
川瀬 和也 宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (90738022)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 行為者性 / 人格的自律 / アイデンティティ / 疎外 / ヘーゲル / 精神現象学 / 関係的自律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代哲学研究とヘーゲル哲学研究の両面から、行為者性概念を再検討することを目指した。 現代哲学に関連したアプローチとして、人格的自律に関する「階層説」と呼ばれる理論が行為者性理解にとってもつ意義について、重要な論者の見解を比較し、整理した。階層説では、自分が為そうとすることについて、自らそれを是認しているかどうかに関わる「二階の態度」が行為者性を理解する鍵となるとされる。この二階の態度の捉え方と、行為者のアイデンティティの問題との関わりを明らかにした。 また、ヘーゲル哲学研究に関連したアプローチとして、『精神現象学』における行為概念と疎外概念についての現代的再構成を行った。『精神現象学』のヘーゲルは、「理性」章のB節とC節において、人間の行為のあり方に分析を行っている。そのうちB節では、行為が社会的、時間的影響の観点から分析され、当初の狙いとは異なる結果が必然的に生じるということが論じられる。このヘーゲルの議論が行為者性の理解に関して持つ意義を検討した。 さらに、両者を総合することで、『精神現象学』の疎外論と現代の自律論、行為者性論との関係についても明らかにした。『精神現象学』の疎外論は、「疎外」の語が通俗的にもつ否定的なイメージとは異なり、「疎外」が自己を客観的に見ることと、他者との関係を離れて自己を理解することを可能にする点で重要だということを論じている。これらの観点のうち、前者が自己の客観視という点で現代自律論における階層説に関わり、後者が他者との関係のあり方が、行為者の自己理解に影響を与えることを指摘した点で関係的自律論と関わりうることを明らかにした。
|
Research Products
(6 results)