2020 Fiscal Year Research-status Report
真鍮製彫像の制作法と受容から再考する植民地期西アフリカ芸術
Project/Area Number |
19K12977
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
柳沢 史明 西南学院大学, 国際文化学部, 講師 (10725732)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカ / アフリカ美術 / ベナン / 真鍮 / 宣教 / フランス植民地主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に行ったシンポジウム「アフリカからアートを売り込む」の成果を一般に公表するため、登壇者らとともに書籍化のプロジェクトを推し進めた。具体的にはシンポジウム登壇者らへの発表原稿の修正および推敲を依頼するとともに、書籍内収録予定となるアフリカのアート販売を行う企業代表者二名及び研究者二名との座談会の実施、企業二名の原稿に対する応答文などの執筆を行った。研究代表者自身の研究としては、前年度のシンポジウム原稿及び前年度に行ったフィールドワークをもとにベナンの真鍮製彫像の作成・受容の歴史をフランスによる植民地史との関係で分析し論述を行った。さらに、書籍の序文として、アフリカ彫刻を日本へと「売り込む」歴史をデパートでの展示やアフリカ協会による支援などに着目し、日本におけるアフリカ由来のアートをめぐる受容・研究の展望について分析を行った。これらの研究成果は2021年度初頭に『アフリカからアートを売り込む 企業×研究』(仮題)として刊行予定である。また、1920~30年度のフランスにおけるアフリカ彫刻受容の一側面として、美術批評家W・ジョルジュの批評に焦点を当て、「アールネーグルの黄昏」をキーワードに、ジョルジュのアフリカ彫刻観、モダニズム観を明らかにする発表を行った。上記以外にフランス植民地史・文化論に関する書評1本の執筆、民族誌・文化人類学と芸術に関するフランス語文献の翻訳を4本(2021年度以降に刊行・発表予定)実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍ということでベナンのフィールドワークおよびフランスでの資料収集等は難しい状況が続いており、最終年度となる今年度も海外調査等の実施は厳しいものと考えている。また2020年度より勤務地の変更に伴いが多少なりとも研究時間確保等に変化を及ぼしたことも事実である。他方で、前年度の現地調査及び書籍・資料分析、研究成果の公表のための原稿執筆・原稿依頼等は順調に進んでおり、当初予定していた範囲に関して一定の研究成果を公表できるものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度もコロナ禍が続くことが予測されるため、フィールドワークの実施及びフランス等への資料渉猟は中止・変更を予定している。昨年度から進めているシンポジウム成果の書籍が本年度上半期に刊行予定され、その反響を受けつつ三年間の研究成果をまとめるとともに、これまでに渉猟した資料の整理、文献の分析等を通じ、真鍮及び金属製彫像の技法の地域差やその歴史研究、ベナンを中心とした西アフリカの植民地文化、フランスの植民地支配と宣教といった主題群をより広域的関心へと結びつけ、文化史・芸術研究のさらなる展望を切り開く予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初予定していたベナンへの実地調査やフランス、イタリア等のアーカイブへの資料収集調査がすべて中止となったことや、勤務地変更に伴う様々な仕事環境の変化、書籍購入や備品調達等も様々な今後の状況を考慮したこと、さらにシンポジウム成果公表のための経費など、2021年度以降の使用を検討した結果、使用額との差額が生じたが、最終年度となる2021年度は研究計画や今後の研究展望を勘案した研究費使用を実施する予定である。
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