2021 Fiscal Year Annual Research Report
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19K13093
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 文彬 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (30758537)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 初唐 / 駱賓王 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は初唐四傑の駱賓王に着眼した。彼は齋梁以降の文学については聲律の細密さを理由に批判するのであるが、その実作に於いては「詠鵝」「秋螢」等、齋梁体を彷彿とさせる表現を使用している。 初唐期は、齋梁体の影響を乗り越えながら新たな詩風の在り方が模索され、盛唐文学への橋渡しとなったというのが定説であるが、本研究は駱賓王が修辞的文学と訣別したその契機を儀鳳三(六七八)年の投獄と考え、獄中で制作された「在獄詠蝉」詩、「螢火賦」を中心に据えつつ、彼の文学観を明らかにした。 獄中作品の多くは自らの潔白を他者に訴えるものであるが、「螢火賦」は自らの為だけに語られたものであり、蛍の様に高潔では有り得ない自己をしかと見つめることを目的とするものであった。投獄の経験のみではなく、そこで得た深い自己凝視の視点が彼の文学観を変える契機として機能していたのであった。
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