2020 Fiscal Year Research-status Report
Spatial Expression in Hawaiian
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19K13156
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岩崎 加奈絵 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 日本学術振興会特別研究員 (30828827)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハワイ語 / 文献資料 / 文法研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はハワイ語テキストデータを使用し、用例に基づいて、動作の方向を示す機能語、いわゆる「方向詞」についてその性質をより詳細に記述することを目的とする。2年目にあたる当該年度は、概ね当初の計画に従い、主に以下のような活動を行った。 1) データの拡充:ハワイ語関連文献データベースのウェブサイトである “Ulukau (the Hawaiian Electronic Library)” 収蔵の文献資料デジタルデータより、Samuel Manaiakalani Kamakau (2001) "Ke Aupuni Mo'i", Julie Stewart Williams (1996) 'O Kamehameha Nui"の2編を用例検索に用いるコーパスに使用する電子データに加えるものとして選定し、表記法や書式、誤表記の修正といった調整作業を実施。 2) 文脈情報に着目した分析への移行:Samuel H. Elbert (1959) "Selections from Fornandner’s Hawaiian Antiquities and Folklore" より “He Moolelo o Kawelo”を対象として、文脈情報や語りの中の変化、とりわけ主語の変遷と方向詞の選択との関係の分析作業を実施。 3) データ形式に関するデジタル人文学の知見の参照:これまで申請者のみが使用してきた電子データについて、個人蔵データに留めず、それ自体を研究活動の成果の一部としたうえで他の研究者による利用に繋げるため、メタデータ付加やアーカイブ作成などについての作業工程およびデータ公開の実現可能性を検討、タグ付けテキストのパイロット版作成に着手。 4) 成果発表:方向詞について、それと密接に関係する指示詞の性質と合わせて取り扱った口頭発表を2件実施。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目である本年度は、第一に、予定通り文脈情報に着目した研究の一環として、ハワイ語テキスト文の語りの構造を明らかにするため、物語文1編を対象に主語の変遷と方向詞との関係の分析に着手した。第二に、コーパスとして使用する文献資料のデジタル化作業と、それと並行してデータの形と利用方法に関する検討を進めた。副次的なこととして、こうしたデータについて、今後の自分以外の研究者にも開かれた形でのデータ活用を見据え、デジタルヒューマニティーズの知見を得ることに努めた。当該課題にも関連するこのような新しい点に取り組んだため、全体としてみれば一定程度の進展はあったものの、初年度の進捗の遅れを取り戻すには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者は本課題をふくめ自身の研究活動の大半をハワイ語の空間表現の分析に充てているが、本課題が対象とする「方向詞」を始めとする、空間表現に使用される文法要素の使用規則の分析という点について、作業そのものは進めているが、はかばかしい状況とも言い難い。その理由として、方向詞を含めた機能語の使用規則に関わることが想定される事項の候補が搾り切れておらず、個別の要素についてそれぞれ深く検討する段階に至っていない点があると考えている。 それを踏まえ、状況を打破すべく3年目においては分析・考察自体は地道に進めつつ、成果発表の機会を増やすという基本方針、および国際学会への参加という点も変更はないが、より広く突破口を求めるべく、比較的規模の大きな学会・シンポジウムより、中小規模の研究会での中間報告を増やし、こまめに他研究者からのフィードバックを得ることを重視する。 ただし、現在の海外渡航の難しさに鑑み、オンライン開催の国際学会への参加は可能であるものの、研究交流の一部や、ハワイ現地へ赴く計画を実践することは難しいと言わざるを得ない。文献、それも基本的には公刊されたテキストを使用する研究手法を取るため、それにより本課題に大きな支障があるものではないが、その期間をデータ分析の精緻化や、意見交換の機会に変えて論文・書籍による談話分析の手法の知見を深めることに充てるなど、柔軟かつ有意義な対応を取る必要があると考える。
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Causes of Carryover |
本年度にはハワイへの海外出張を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大という社会情勢に鑑み、出張が取りやめになり、旅費が使用されなかった。
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Research Products
(2 results)