2021 Fiscal Year Research-status Report
Spatial Expression in Hawaiian
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19K13156
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岩崎 加奈絵 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD) (30828827)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハワイ語 / 方向表現 / 移動表現 / 方向詞 / 言語学 / 文献研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はハワイ語テキストデータを使用し、用例に基づいて、動作の方向を示す機能語、いわゆる「方向詞」についてその性質をより詳細に記述することを目的とする。3年目にあたる当該年度は、主に以下のような活動を行った。 1) データの拡充:ハワイ語関連文献データベースのウェブサイトである “Ulukau (the Hawaiian Electronic Library)” 収蔵の文献資料デジタルデータより民話をコーパスデータとして追加。また、既存のデータについても検索のしやすさを向上させるための調整を適宜施した。 2) 文脈情報を含めた用例分析の継続:2年目に行った民話"Ka Moolelo o Kawelo"へのタグ付け作業の見直しを行った。まず分割単位を、文よりさらに細かく「行為を表わす述語」ごとに改めた。その上で、考察の際に必要と考えられる事項として「話法」「統語的主語」「動作主」「被動者」「(動作主と被動者の関係から推察される)視点の位置」「方向詞の有無・種類」を主に設定し、"Ka Moolelo o Kawelo"に加えて新しいテキスト "Laieikawai" の第1節に適用した。 3) 「移動表現の内容語」の抽出:これまで実際に文章中に使用されている用例のみを見てきたが、空間表現にとって典型的な事例に当たる、移動を表わす内容語にあたる語の数や種類、分類といった記述はいまだなされていない。そこで、Pukui and Elbert (1986) "Hawaiian Dictionary: Revised and Enlarged Edition" より、移動を表わす語を抽出する作業に取り掛かった。 4) 成果発表:方向詞について、それと密接に関係する指示詞の性質と合わせて取り扱った国際学会発表を1件、その他国内ポスター発表を1件、また研究会での報告等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の「今後の研究の推進方策」に記載したことについては、概ね予定通り取り組めている。つまり、「国際学会での発表」「今までよりさらに専門を近くする研究会での中間発表」といった事項に関しては、それぞれ別項の研究成果に挙げたとおり実現した。 一方、作業としては2年目に比較し、より具体的かつ詳細な単位でのテキストの分析に取り組み、方向表現の選択に関するいくつかの傾向や、明文化されていなかった点を新しく明らかにしたといえる点はあり、これは既に4年目中の学会発表が決まっている。しかし、課題の最終年度を迎えるにあたり、より包括的な記述への寄与に繋がるかという「大局的な」見方をした場合、じゅうぶん考察が進んでいるとまでは言えないため、その点をやや遅れている、と評価している。 また、中間発表や他研究者からのフィードバックを積極的に求める、という点については、より積極的に発表・報告等の活動を自発的に行っていくことが可能であったと考えるため、それも予定に対する「遅れ」であると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、最終年度は他のポリネシア諸言語との比較研究を交えつつ、課題の総括を行うことを考えていた。これらの点は可能な限り実際に取り組みたいと考えている。 ただし、これまでの研究状況に鑑み、総括や言語間比較に移る前に、出来る限り多くのハワイ語テキストを対象に、タグ付け作業とその結果分析に追加で取り組むことを優先する。理由として、「現在までの進捗状況」の項に記した通り、考察の進展が十分ではないと考えていることもあるが、これまでの研究により「書き手(語り手)のくせ」のような、必ずしも文法記述とは直結しない特徴も混在した状態で「結果」として出てしまう可能性が見出されたため、想定していた以上に多様な書き手によるテキストを対象にすることが重要であると考えるためでもある。 もちろん一つの研究課題として、年度末には成果の取りまとめを行うが、他言語との比較研究等よりも、優先的に追加のテキスト分析を複数行ったうえで、成果報告書の作成に取り組むことを目指す。 なお、当該課題期間中に行う予定であった、資料収集を主目的とするハワイ訪問については、新型コロナウイルスの状況に応じて、可能な範囲で実現することとする。
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Causes of Carryover |
最大の原因は旅費の取り消しによる。3年目(2021年度)も2020年度に引き続き国内外の学会がオンライン開催となったため、旅費の使用がなくなった。この差額については、本年中に海外出張による資料収集や研究会・学会参加が可能になればその目的で使用するが、現時点では春季学会でもすでにオンラインに変更になっているものがあるため、使用は確定的ではないことを注記しておく。物品費等その他の支出に関しては概ね予定通り行う予定である。
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Remarks |
「ハワイ語における『視点』の位置」という題目で、ハワイイ研究会(2021年6月12日)にて口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)