2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K13165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿久澤 弘陽 京都大学, 国際高等教育院, 講師 (30825162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コントロール / 語彙意味論 / 定形節 / 時制 / 統語論 / 態度動詞 / 繰り上げ / 文末名詞文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、日本語の定形コントロール(finite control)と呼ばれる現象を、コントロール述語の意味の観点から説明することである。従来、日本語の定形コントロールは埋め込み節の統語構造によるものとされることが多かったが、仮定される構造の根拠が必ずしも強固ではなく、経験的な問題も少なからずあった。本研究では、コントロール述語の意味を精査することで、コントロール現象のみならず、それに付随する多くの課題(とりわけ補文時制の選択)が解決できることを示す。本年度は主に以下の課題に取り組んだ。
(1)コト節をとるコントロール述語の語彙的意味を「態度(attitude)」という観点から精査し、特に補文の時制辞と意味との相互関係(コントロール述語による補文時制の意味的選択関係)が、精緻に記述した語彙的意味の中のどの特性によって捉えられるのかを明確にした。 (2)定形コントロール構文であるというラベル付けに留まることが多かった述語「つもりだ」 「気だ」の意味分析を行い、前者は「責任関係」という概念により、後者は「観察」という概念によりその語彙意味をより正確に記述できることを示し、語彙意味と補文時制の選択関係を明らかにした。 (3)母語話者間でも必ずしも内省判断が一致しない部分的コントロール(partial control)と呼ばれる現象に対して、内省判断に関する予備調査を計画・実施し、コントロール述語の意味と部分的コントロールの関係性を明らかにするための材料を揃えた。 (4)コントロール述語の補文の述語形式の選択(とりわけモーダルに関する形態・形式の選択)について、記述的整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の研究会で1件、国際学会で1件成果を発表することができた。加えて、国内ジャーナルに論文を1本掲載することができた。また、分析対象に関する内省調査を実施できた。よって、本研究は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
コントロール述語の語彙意味分析は、コントロールのみならず「態度」「時制」「定形性」など、統語と意味に関する重要なテーマに広く貢献しうることが明確になってきた。したがって、そうしたより大きな視点も射程に入れながら語彙意味の記述・分析を進めていく予定である。 また、引き続き実験的手法を取り入れながら、コントロール現象の記述的整理にも努めたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、コロナ感染拡大対策のため学会・研究会がオンライン開催となったことで旅費での使用がなかった。また、現在投稿中の論文がまだ査読中であるため、その論文のオープンアクセス化や英文校正費にかかる費用を計上できていない。
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