2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13244
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
李 址遠 法政大学, 経済学部, 専任講師 (30802128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 談話分析 / 言語と思考 / 言語相対性 / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、データの収集と加工、研究の理論的基盤と分析アプローチの検討を主に行った。 【データの収集と加工】 本研究では、これまで7名の協力者に対し、計38件のインタビュー調査を行った。そのうち、3名(計4件)に対する調査は協力者の都合により中断されたが、残り4名に対する調査は現在も進行中である。その4名のうち2名(調査頻度:約2ヶ月に当たり1回)に関しては、現段階で1年2ヶ月以上の縦断的データが収集できており、残りの2名(調査頻度:約1ヶ月に当たり1回)に関しては10ヶ月分以上の縦断的データが収集できている。これらのデータのうち、計8件のデータに関しては一次的文字化作業が完了しており、現在14件の文字化作業が進行中である。なお、現在は本格的な分析に向けた準備段階として、文字化が完了したデータの精査を行っている。 【理論的基盤と分析アプローチの検討】 昨年度に引き続き、言語相対性に関する先行研究を検討すると共に、心理学、社会学、文学などにおけるナラティブ分析に関する先行研究を検討した。言語相対性に関しては、昨年度と同様、言語構造と認知の間の相関関係という範囲を越えた、言語と自己・他者・世界への認識の間の関係に関する研究は見当たらなかった。一方、ナラティブ分析に関しては、特に質的心理学におけるナラティブ研究や、社会学におけるライフストーリー研究から、自己と他者、世界への認識の形成におけるナラティブの中心的な役割と、ナラティブを通した社会的現実の構築という有意味な示唆を得ることができた。ただし、そのような視点を言語習得および言語主体の縦断的変化の分析に活かした研究は現段階では見つからず、ナラティブ研究の認識論と方法論を、言語の習得・発達に伴う認識の変化という問題系に導入するという新たな可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
調査協力者の募集や調査の継続における困難さによって調査デザインにやむを得ない変更が生じ、 当初2019年中に予定していた調査開始が2020年にずれ込むことになった。このことにより、研究全体のスケジュールも約1年ずれ込むようになった(調査デザインの変更に関する経緯は令和元年度の実施状況報告書において報告済み)。 なお、令和元年度の実施状況報告書では、2020年度の下半期から調査と同時に分析を並行して行うという計画を述べていたが、その時点で収集できたデータが縦断的分析のためには十分でないことが判明したため、本格的な分析を開始するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はデータの継続的な収集と共に、データを分析し、研究成果を公表していく予定である。4月末までに1名分、6月末までにもう1名分のデータの文字化が完了する予定となっており、6月以降本格的な分析に取りかかれるものと思われる。夏から秋にかけてデータの分析を行い、本年度末に研究発表や論文投稿等を通して研究成果を公表できるよう、研究を進めていく予定である。なお、残りのデータに関しても順次文字化作業を行い、分析に加えていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究スケジュールのズレ込み、ならびに、コロナウイルス感染拡大による自宅作業用PCの購入と旅費の不使用などにより、当初の支出計画との間に差が生じた。2021年度は、次年度使用額を含め、研究費を主に人件費・謝礼(調査協力者への謝礼と文字化作業の謝礼)として支出する予定である。
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