2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K13244
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
李 址遠 法政大学, 経済学部, 講師 (30802128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 談話分析 / 言語と思考 / 言語相対性 / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、データの収集及び加工、分析を主に行った。 【データの収集及び加工】2020年度から継続していた4名の協力者に対して、計18回のインタビュー調査を行った。4名に対する調査は、2021年11月をもって全て終了している。優先的な分析対象として定めた2名のインタビュー(計33件)については、文字化作業も全て完了した。文字化した2名のインタビューデータを精査し、分析のための一次的コーディングを行った。 【データの分析】現在、2名のインタビューデータを比較しながら、本格的な分析に向けた分析観点を精査している段階にある。現段階で分析観点として定めたのは次の3つである。 ①「同じ」語りに見られる語り方の変化:インタビューの中には、同じ話題や内容に関する語りが、異なる時期に2回以上登場する例が複数観察された。特に1名の協力者に関しては、1年半の調査期間中に言語能力の向上が比較的顕著に見られており、そのデータを分析することで、言語学習が語りを通して指標される自己・他者・世界のあり方にいかに影響するかを検討できると予想している。 ②母語による語りと第二言語による語りの違い:2名に対しては最終回のインタビューを母語(英語)で実施している。母語と第二言語によって生じる(または、生じない)語りの変化を精査することで、言語学習が語り(したがって、自己・他者・世界の表象の仕方)にもたらす影響を考察できることを確認した。 ③場所と移動に関する語りとアイデンティティ:2名のインタビューには国や地域に関する語り、そして、国と地域の間の移動の経験に関する語りが多く含まれていた。場所と移動の語りを精査することで、他者と世界の表象を通した自己アイデンティティの指標の問題を考察できると予想している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初2019年中に予定していた調査開始が2020年にずれ込むことにより、研究全体のスケジュールがずれ込むことになった(調査デザインの変更に関する経緯は令和元年度の実施状況報告書において報告済み)。本年度の前半(調査進行中の段階)にデータの分析を試みたが、語りの変化を縦断的に分析するという研究課題の特性上、まずは調査の終了を待った方がよいと判断したため、本格的な分析は2021年度後半から開始することになった。外部的な要因としては、2022年4月に法政大学から大阪教育大学へ所属機関が変更となり、諸手続きや引っ越し等で研究に充てられる時間が減ってしまったことを挙げられる。これらの状況を踏まえ、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集や加工等、分析のための準備は整っており、分析観点も定まっている。今年度は本格的な分析に取り掛かり、年度中に結果を公表できるようにしたい。上で挙げた分析観点のうち、まず「③場所と移動に関する語りとアイデンティティ」に関する研究に取り掛かり、続いて「①「同じ」語りに見られる語り方の変化」に関する研究を行う予定である。③については今年度の半ば以降、①については今年度の後半を目安に、論文投稿や学会発表等の形で研究結果を公表していく予定である。「②母語による語りと第二言語による語りの違い」については、研究期間内に研究成果を公表できるか不透明であるが、少なくとも期間内に分析を終わらせることを目指す。
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Causes of Carryover |
調査の遂行、優先的な分析対象として定めた一部のデータの加工が完了し、必要な機材や文献等もある程度揃ったため、次年度(1年延長)使用額が発生した。次年度使用額は研究遂行上必要となる書籍の購入に充てる予定である。
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