2020 Fiscal Year Research-status Report
「話す」のに必要な項目はなにか?ー会話分析を用いた初級学習項目の見直しー
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19K13249
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 真理 関西学院大学, 日本語教育センター, 准教授 (00743212)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語初級文法 / 会話分析 / 場面・状況 / 話しことば / 語り |
Outline of Annual Research Achievements |
初級で提示される「語彙表現」のうち「わかる・知っている」「わからない・知らない」を対象に、すでに収集済みのデータからコレクションを作成した。作成の際には、専門知識を持った協力者にも協力を仰いだ。この二つの表現を扱ったのは、「わかる・知っている」の使い分けは上級になっても適切に行えていないケースを度々目にしていたためである。 まず、「知っている?/わかる?」という質問・確認に対する応答として「わからない/知らない」が用いられている場面に焦点をあててデータを収集した。これらの事例は特に第二言語話者とのやりとりの中で頻繁にみられた。しかし、母語話者同士の会話では、「知っている?」が何かの導入として用いられることはあっても、「わかる?」が用いられることは少なく、現段階では十分なコレクションにはなっていない。つまり、明示的に相手の知識の有無を尋ね、それについて応答するやりとりは頻繁には用いられていなかった。これは直接相手の知識の有無を尋ねるやりとりを行うことは、相手が知識を持っていないことを晒す可能性もあるためではないかと思う。一方で第二言語話者とのやりとりにおいてもいつでもこうしたやりとりができるわけではない。今後詳細を検討していく必要がある。 また、経験を語る場面における「わかる」も収集した。相手の経験に対する態度への共感を示す際に、聞き手が「わかる」が用いられており、これは平本(2011)でも同様の指摘がある。また、経験を語る場面では「わかる」以外にも「なるほど」「そっか」など様々な表現形式を聞き手は用いる。実際に日本語の教科書でもこうした様々なバリエーションが提示されているが、使い分けについて十分に説明はなされていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集や書き起こしは順調に進んでいるが、分析やデータセッションへの参加がすすんでいない。多くの学会、研究会が休会となっていたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータ整理とコレクション作成を行う。 特に「知っている?/わかる?」という質問・確認に対する応答として「わからない/知らない」が用いられている場面のコレクションを引き続き集め、日本語第一言語話者と第二言語話者の会話での使われ方について検討していく。そのため、第二言語話者とのやりとりも含めてデータのバリエーションを増やしてさらに収集する。また、経験を語る場面の聞き手の反応の使い分けに注目していくこととする。
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Causes of Carryover |
2020年度は旅費としての支出ができなかったため、2021年度は可能な限り旅費としての支出をする予定である。
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