2020 Fiscal Year Research-status Report
Ancient Roman Gardens and the Origins of Formal Gardens
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19K13384
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川本 悠紀子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (70780881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古代ローマ庭園 / 古代ローマ / ランドスケープ / ウィトルウィウス / キケロ / 庭園 / ポンペイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本来、2020年度には海外の研究所に赴いて文献調査を行い、またポンペイでの庭園の発掘調査にも従事する予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響でこれらの調査が叶わなかったため、国内で可能な文献調査と史料の再精査を中心に行った。 1)中世の観賞用庭園に関する研究:2019年以降、キャロライン・グッドソンによって中世の庭園に関する研究書・論文が相次いで刊行されている。彼女は、イベリア半島やシチリアを介して伝わったイスラム文化圏の庭園や植生が、中世の観賞用庭園の発展に寄与したとするこれまでの見解に対して、先述の「仲介した地域」でも既に豊かな庭園文化が開いていたと史料を元に明らかにしている。他方、これらの豊かな庭園文化的要素の中には、古代ローマ時代の庭園で見られたもの(例:hortus conclusus)もあることから、「仲介した地域」における古代ローマの影響がどのような点に確認されうるかを再検討した。 2)古代ローマの庭園の史料の再精査:庭木の剪定や、庭園のデザインに言及している史料を再検討した。キケロの書簡集に見られる庭園の描写から、アリストテレスやテオフラストスの史料を調査する必要性が出てきたため、ギリシア哲学に関連した書物の検討を行った [本来はこの内容の一部を学会発表する予定であったが、学会が延期された]。また、ウィトルウィウスの『建築書』住宅・別荘に関する記述の考察し、その成果の一部を刊行した(「ウィトルウィウスの『建築書』の古代ローマにおける受容」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、本来予定していた海外調査が出来ず、また予定していた学会発表も中止になったことから、当初予定とは異なる研究を行うことになった。しかし、庭園の意匠に関する史料を理解する上でギリシア哲学の文献は欠かせないという新たな知見を得ることができた。また、中世の庭園については、史料・考古学的成果に時代・地域差があるとはいえ、古代ローマ庭園の継承・非継承を考える上で抜きにして考えるべきではない。これらのことから、研究計画の変更は出たものの、研究は進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、2021年度・2022年度にも海外調査を積極的に行い、ルネサンス期以降に書かれた古代ローマの史料の注釈書を調査する予定であった。未だ渡航が困難であることから、国内で入手が可能な研究書や、研究所を通して入手が可能な写本(デジタルデータ)の調査を行いつつ、状況が改善され次第海外調査を再開したい。
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Causes of Carryover |
本来、2020年度には海外での資料調査・発掘調査を行う予定だったが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大ゆえ、海外渡航が出来なくなった。そのため、2021年度に海外調査が可能になる場合には、次年度使用額を海外調査費用とし、もしも調査が難しい場合には文献購入費用として使用する。
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