2019 Fiscal Year Research-status Report
亡命期ビザンツ帝国の外交から見た13世紀ユーラシア世界
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19K13389
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 光司 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (20793558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビザンツ帝国 / ユーラシア / 外交史 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究初年度であるため、研究史をたどる作業、史料収集、そして外交関係記録のデータ整理を主目的に据えた。本研究の対象となる時期、すなわち13世紀前半の外交交渉については、未だ史実の確定があいまいなままにされている箇所も多く、個別の事件に関する検討を積み重ねていかねばならない。そのため研究全体に関する作業と並行して、本年度は1230年代後半から1240年代前半にかけての、主として外交に関するニケーア政権のクロノロジーを検討した。その初発の成果として2019年7月には、オーストラリアのマコーリー大学で開催された国際学会において“Political Corruption and Anticorruption in the Thirteenth Century Byzantium”と題した報告を行い、とりわけ外交に携わったとある帝国役人の行動の検討を通じて、いくつかの史実の年代確定(修正)を試みた。現在はこの内容を大幅に修正し、投稿論文を作成中である。 もう一点、13世紀後半の修道院聖堂壁画のコンテクストを検討した論文を作成し、その史料の誕生がビザンツとシチリア王国その他の外交的やり取りの間に位置づけられることを論証した。この成果は2019年度の『西洋史学』誌に日本語で掲載された。 一方で当初の計画予定では、研究内容の議論のため年度末にヨーロッパに滞在する予定であったが、社会情勢の変化に鑑み中止せざるを得なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた海外研究者との議論はできなかったが、個別論文の作成および全体に関する作業は順調であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータの収集および整理、そして個別の論点に関する検討作業を順次行っていく予定である。海外研究者とのやりとりについては、極力オンラインでの対応を検討するべく、対処を行っていく。また2020年度は国際学会での報告を計画していたが、社会情勢の悪化に伴い開催が危ぶまれるため、こちらも研究内容を身近な研究者たちに個人的に点検してもらうなど、成果のまとめや公開についても新たな対策を講じる必要がある。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張がキャンセルとなり、その費用の一部を来年度に回したため。
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