2019 Fiscal Year Research-status Report
近世フランスにおける「ナント王令体制」再考:建築・科学・軍事における宗教論的転回
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19K13390
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
坂野 正則 上智大学, 文学部, 准教授 (90613406)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近世ヨーロッパ / フランス / ナント王令 / 宗教論的展開 / 宗教と空間 / ノートルダム大聖堂 / 建築と宗教 / 宗教と科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の年次計画は、当初「ナント王令体制」の時代のフランスにおける「建築」を通じてみられる宗教と社会・文化との関連を問うものであった。同時に、建築史の専門家との共同研究の土台を構築することも研究初年度の達成目標であった。研究開始直後の4月15日にパリのノートルダム大聖堂の火災が発生した。直後から文化遺産の再建をめぐる議論が世論の中で盛んになってきたが、この大聖堂の歴史的変遷の経緯において主要な位置の一つを占めるのが、17~18世紀のフランスであり、この問題は西洋史学のみならず建築史学やキリスト教神学との領域横断的発想で研究していくことが重要であることが分かってきた。建築と宗教との関わり、西洋史学と建築史学との協働という、この研究課題がもっていた手法が有効であることに気づき、初年度の半ばから後半にかけてこの課題に注力した。 2019年10月19日には、「パリ・ノートルダム大聖堂の再生へ向けて―歴史/信仰/空間から考える―」と題するシンポジウムを本科研研究主催でおこなった。西洋史・建築史・キリスト教神学を専門とする6名が登壇し、領域横断的な議論を深めることができ、会自体も盛況であった。ここでの問題提起は、『歴史学研究』993号(2020年2月)で公表した。 時事的課題からの着想とはいえ、この研究に新たな視点を加えることに成功した一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の活動を通じ「司教座聖堂の歴史的改修」という新たな視点から本研究を分析する可能性が開けたことと、建築史家やキリスト教神学者との人的コネクションを作り、次の研究の展開へと踏み出せたことは大きな成果であった。こうした1年目の成果は、新たな研究企画の立案に大きく貢献すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度後半はシンポジウムの開催や研究成果の一部を出版化することに精力を傾けたため、初年度に行うはずであったフランスでの史料収集に着手できなかった。本来は、2020年3月に実行する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う海外への渡航制限により叶わなかった。 コロナ渦の推移は余談を許さず、本研究にも深刻な影響が考えられるが、事態が収束するまで、これまでの研究成果の整理と新たな問題発見に精力を傾ける予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度に実施予定であった海外調査が新型コロナウィルスの感染拡大で難しくなったため、海外渡航費を2020年度に繰り越すこととなった。
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