2019 Fiscal Year Research-status Report
南米コロンビアの都市避難先住民から見る「多文化主義」をめぐる人類学的研究
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19K13472
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 宏 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (20706668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 先住民 / 多文化主義 / 国内避難 / コロンビア / ポストコンフリクト |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、8月から9月にかけて現地調査を行ない、国内避難民にとっての「多文化主義」的な考え方が社会生活における障害となっている状況がいくつかわかった。それはおもに、公共機構におけるコミュニケーション状況で、権利行使のための申請や行政サービス受給、医療機関の対応などであった。一方で、行政機構の側でも、代替的な先住民避難者への対応策を考え実践する必要性があるという問題意識が、少しずつではあるが、形成されていることがわかった。 また、コロンビア国内のシンポジウムに参加者として参加した。さまざまな議論を聞くなかで、「内戦後」と言われるコロンビア社会だが、内戦的暴力が局所的に現存する/放置されている現状があり、和解/修復的司法や記憶構築といったことを論点とするポストコンフリクト論とは異なる問題を抱えた社会状況があることがわかった。 調査後には、それまでの調査/研究成果をまとめ、異なる共同研究会で発表をおこなうことができた。コロンビア研究者の集まる研究会と、辺境地域における「統治」を問題とする人類学的分析を進める共同研究者の集まる会で、異なるパースペクティブからさまざまな助言を受け、これから研究を深めるうえで必要な論点を整理できた。 2020年度も継続的に現地調査を行う予定であったが、Covid-19の影響で予定の変更をする必要がある。そこで、これまでの現地調査成果に対する考察を深めるために、コロンビアにおける「国内避難者」という法/行政的カテゴリーの形成について、既存の研究の再検討を中心とした調査を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、8月から9月にかけて現地調査を行ない、国内避難民にとっての「多文化主義」的な考え方が社会生活における障害となっている状況がいくつかわかった。それはおもに、公共機構におけるコミュニケーション状況で、権利行使のための申請や行政サービス受給、医療機関の対応などであった。一方で、行政機構の側でも、代替的な先住民避難者への対応策を考え実践する必要性があるという問題意識が、少しずつではあるが、形成されていることがわかった。この現地調査は、今後考えるべき論点が具体的かつ明確になったという点で実りがあるものだった。 またその調査を踏まえてた研究の発表を、異なる共同研究会で論点を少し変え、二度行うことができた。それによって、今後研究を深めて考えるために必要になる調査事項などを整理することができた。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も継続的に現地調査を行う予定であったが、Covid-19の影響で予定の変更をする必要がある。とりわけ、現地調査の実施を「予定」することは難しい。そこで、これまでの調査成果について、日本語とスペイン語でまとめ、研究会や私的な草稿として、コメントをもらい、状況が変わり現地調査が可能なったあとの調査成果から文章としての発表までがスムーズになるような準備を進めたい。 そのほか現地調査成果を通して浮上してきた、行政的コミュニケーションという論点についての考察を深めるために、コロンビアにおける「国内避難者」という法/行政的カテゴリーの形成について、既存の研究の再検討やインターネットでも公開されている公的資料の考察など、文献調査を進める。この文献調査に、コロンビアの内戦暴力に関する人類学分野における研究の積み重ねのレビューなども含め、現地調査について考えられないからこそ、できることをしたい。そのほか、現地調査で知り合った人々とはさまざまな連絡ツールを使用し、コンタクトを続ける。
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