2023 Fiscal Year Annual Research Report
南米コロンビアの都市避難先住民から見る「多文化主義」をめぐる人類学的研究
Project/Area Number |
19K13472
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
近藤 宏 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (20706668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国内避難民 / 先住民 / コロンビア / 多文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間を一年延長し、最終年度となった2023年度には、追加的な現地調査をおこなうことができた。昨年度の調査のなかで浮かび上がった調査事項である、IDPとなった先住民による植物を用いた空間構築に焦点をあて、さらなる調査をおこなった。その成果については、論文というかたちでまとめている最中である。そのほか、2023年度には、これまでに行ってきた、現地調査・文献調査の成果を、論文集の論文としてまとめる作業を終わらせた。ひとつは、コロンビアにおけるIDPの可視性の変遷を、さまざまな質的研究/エスノグラフィーを考察することでまとめた論文である。もうひとつは、IDPとなった先住民が組織する被害者団体の活動についての民族誌的考察である。とりわけ、被害者団体の活動や人びとの経験に読み解くことのできる地理学的想像力が、いかに、コロンビア社会におけるマジョリティの地理学的想像力と異なるのかを示した。そして前者の想像力には、脱植民地的傾向性があることも示した。 研究期間のあいだには、covid-19の影響で現地調査が進められない期間もあった。その期間には、先住民のみならずIDPを対象とした質的研究の考察を進めることもできた。それにより、先住民IDPたちの活動に潜むコロンビア社会に対する批判性を深く考察することが可能になった。また、現地調査を進めるなかで浮かび上がった先住民IDPによる都市空間の隙間における菜園構築という現実からは、都市を先住民が同化される空間とみなす、コロンビアやラテンアメリカ諸国に広がる「文化概念」を批判的にとらえることが可能になる。そのような民族誌的発見が、本研究の大きな成果である
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