2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13488
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川島 翔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30822796)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中世学識法 / 教会裁判所 / 紛争解決 / 訴訟法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世盛期から後期にかけての学識訴訟における紛争解決のあり方を総合的に解明することを目的とするものである。主に以下の2点につき、研究を進めた。 第一に、昨年度に引き続き、シュパイヤーの教会裁判所で訴訟の手引きとして利用されたとされる訴訟法書Ordo iudiciarius antequam(1260年頃)の検討を行った。それに伴い、同史料の翻訳および解説を公表した(「<史料紹介>Ordo iudiciarius antequam 邦訳」『ローマ法雑誌』第2号(2021年))。この分析を通じて、本書の具体的な特徴が明らかになった。規則の記憶を容易にするための暗唱句の挿入、各トピックにおける訴訟法上の概念についての語源に基づいた説明や簡潔な定義と具体例の提示は、初学者に向けた入門書としての性格の現れと言える。また、ところどころで挿入される雛形文書(例えば訴状、召喚状、証人尋問記録、上訴状など)は、本書の実務性の反映であろう。加えて、同雛形文書においては、ドイツの具体的な地名やシュパイヤーに実在した人物名、教会名などが登場しており、このことは本書が持つ地域性の証拠となる。また、イタリアの訴訟法学との相違も確認された。この点、特にタンクレードゥスの著作とのさらなる比較検討が課題となろう。 第二に、Franz Xaver RemlingおよびAlfred Hilgardの編集によるシュパイヤーの証書集の検討に着手した。本来の計画ではフランクフルトの証書集を中心に検討する予定であったが、上記の結果を踏まえ、実際の紛争解決と訴訟法規との関連を分析するため、当面はシュパイヤーの証書を重点的に検討することにした。現時点では、訴訟法書に見られる規則に沿った紛争処理がなされているという印象を持っているが、この要因についてはさらに検証が必要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
規範的史料と記述的史料の両者について、おおむね当初の計画通り内容分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画ではフランクフルトの証書集を中心に検討する予定であったが、訴訟法書との関連から、シュパイヤーの証書集に重心を移すことにした。これにより研究目的の達成には影響はないものと考える。国外での史料調査に関しては、コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ実施を検討する。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせのための旅費を計上していたが、コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ実施を中止したため。次年度請求分の物品費に含めて使用する。
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Research Products
(2 results)