2019 Fiscal Year Research-status Report
近世における私法理論の構築契機-原状回復論の解体プロセスに着目して
Project/Area Number |
19K13489
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 万葉子 西南学院大学, 法学部, 准教授 (10761447)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 後期スコラ学派 / 近世自然法論 / 原状回復 / 所有権 / 合意 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年6月より産前産後休暇および育児休暇を取得したため、当初の計画通りに研究を遂行することができなかった。 2020年度以降は、近世の合意を主体とする私法理論の構築契機を明らかにすべく、後期スコラ学派における原状回復の解体プロセスを考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
産前産後休暇および育児休業の取得により、当初の計画通りに研究を遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、後期スコラ学派に属するソト(Domingo de Soto, 1494-1560)およびモリナ(Luis de Molina,1535-1600)の主要著作『正義と法について(De iustitia et iure)』における原状回復論の特徴を所有権の位置づけおよび意味に着目して考察する。次いで、彼らの原状回復論における合意の位置づけを明らかにする。具体的には、後期スコラ学派において、あらゆる債務が原状回復論の枠組みで説明されていたこと、および、契約が独自の債務発生原因として原状回復論から独立する経緯を検証し、その要因に所有権の位置づけと意味の変化があったことを確認する。 後期スコラ学派と近世自然法論との仲介者として位置づけられているレッシウス(Leonardus Lessius, 1554-1623)は、所有権概念を狭くとらえ、その結果、契約に基づく原状回復を新たに加えることによって契約を独自の債務発生原因として他の原状回復の発生原因から区別している。このことからもわかるように、原状回復論から合意を主体とする私法理論への転換を明らかにするためには、所有権概念の意味に着目する必要があるといえる。 2020年度の研究成果は、西南学院大学法学部の紀要である『法学論集』に投稿する予定である。また、後期スコラ学派に関する資料収集をドイツにて行う予定である。
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Causes of Carryover |
産前産後休暇および育児休業の取得により、当初の計画通りに研究を遂行することができなかったため、助成金を使用しなかった。 次年度は、まず図書費にあてる。研究に必要な図書が大学図書館に少ないため、購入を要する必要性が高い図書が数多くあることから、和書・洋書ともに経費がかかる。主として、後期スコラ学派・近世自然法論(グロチウスやプーフェンドルフ)に関する図書の購入にあてる。 また、コロナの状況をみながら、日本国内の法制史および法思想史に関する研究会に参加し、研究成果を報告することで多くの研究者から助言を得る予定である。さらに、ドイツにおいても研究成果の報告および資料収集を行う必要があるため、国内旅費に加えて外国旅費にあてる。
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