2019 Fiscal Year Research-status Report
憲法上の信頼保護原則の内容・機能・限界に関する研究
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19K13504
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
平良 小百合 京都女子大学, 法学部, 准教授 (00631508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 憲法 / 信頼保護 / 比例原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、法制度の変更がなされる場合、従前の法制度への信頼はいかなる場合にどの程度保護されるのかという問いに憲法の観点から取り組み、信頼保護原則に関する検討を行うものである。特に、ドイツにおいて議論が盛んに行われている憲法上の信頼保護原則の保障内容と機能、限界を検討する。 今年度は、まず、同原則を用いて判断しているドイツ連邦憲法裁判所の判例を素材にして、違憲審査の際、比例原則とともに用いられる同原則の位置付けや具体的な衡量審査の在り様を分析した。学説では、経済・社会状況の変化に応じた法制度の柔軟な変更の必要性もまた認められるものであり、そしてそれは立法者の民主的な決定に基づくものであるため、個人の信頼保護は限定的になされるべきであるとの見解が有力に示されていた。こうした見解が成り立つためには、立法者の民主的な決定は尊重に値するものであるとの前提が必要である。とりわけ、経済規制立法や租税立法は、政治的な妥協に基づいて行われることがしばしばある。また、経済学的な効率性に依拠した判断も関係してくる。ドイツ法について本年度中に論文を公表するには至らなかったが、得られた知見を基に、法律が違憲か合憲かを判断する枠組み(比例原則審査)に、そのような考慮要素がどのように組み入れられるのかをまとめていきたい。 また、日本において、既得の権利保護についてどのように考えられているかを分析、検討し、特に、現在に至るまでの、最高裁判所の見解の基礎を形成したものとして、最大判昭和53年7月12日(国有農地売払い特措法事件)の分析を行った。また、土地政策の変更によって個人が従前から有していた土地所有権は憲法上どのように保障されるかについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツにおける信頼保護原則に関する基礎的な検討は本年度中に行うことができ、また、論点を抽出し、比例原則審査の分析、立法者の民主的正統性の問題へと研究を発展させてゆく見通しが立った。しかし、ドイツ法についての論文公表には至らなかったため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、ドイツ連邦憲法裁判所における比例原則審査における信頼保護原則のはたらきについて、さらに思索を深めとりまとめる。また、立法段階における同原則の考慮のなされ方についても分析を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究会へ出席することができなかったために次年度使用額が生じた。次年度以降に必要な図書の購入費用に充てたい。
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Research Products
(1 results)