2021 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ労災補償法制の基本理念-排他的救済主義の意義と射程
Project/Area Number |
19K13530
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
地神 亮佑 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (80762038)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 労災補償法 / 労災保険法 / アメリカ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ各州の労災補償法が採用している排他的救済主義(労災補償が認められる場合には、同一の事由につき使用者に対する民事訴訟ができない制度であること)について、アメリカにおいて最も著名な解説書の分析を、さらに具体的な州法(ミシガン州のもの)の検討行い、全米の傾向を整理し、7月に開催の関西社会保障法研究会においてその成果を報告した。同成果をさらに発展させ、学術論文として発表する予定である。 得られた成果は次のとおりである。①排他的救済主義の原理的根拠……使用者(労働者に対する無過失責任を負うが、損害の一部補償で足りる)と労働者(補償を受けられるが、民事訴訟ができない)の相互の妥協。連邦最高裁判所の判例でもこれが認められている。②排他的救済主義のもとでは、労災補償の対象を限定する(たとえば、雇用に起因する精神障害を立法により排除するなど)と、かえって使用者が民事訴訟を提起され高額の賠償責任を負うケースがあること。③排他的救済主義が、迅速救済による訴訟コスト低下を意識したものであること。④使用者の「故意」による災害の場合、使用者は民事訴訟の対象となり得る。もっとも、その適用は訴訟コストの低下という制度目的などから、厳格になされている。 他方で、災害を引き起こしたのが同僚労働者の場合、使用者だけでなく当該同僚労働者も免責される(民事訴訟の対象とならない)ことの根拠は明確にできなかった。この点は、現地調査で基本的な考えを明らかにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
20年度および本年度は、アメリカミシガン州等への現地調査(弁護士等の専門家への聞き取り)を予定していたところ、コロナ禍における入国制限等の支障があり、行うことができなかったため、研究の進捗が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で、アメリカにおける現地調査が可能であるかの検討を行っている。可能であれば、以前聞き取りをおこなったミシガン州での調査を行い、その後すぐに研究会報告・論文執筆を行う。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により現地調査が行えなかったため、前年度までに入手した文献調査のみを行った。次年度において、現地調査における旅費・通訳利用の人件費として使用する。
|
Research Products
(1 results)