2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13566
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
池田 愛 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 講師 (50756195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 既判力の主観的範囲 / 承継 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題である「承継」には、民事手続法上、①訴訟承継、②既判力の拡張、③執行力の拡張といった非常に重大な効果が発生する。このような重大な効果と結び付けられている「承継」は、はたしていかなる場合に認められるのか(=承継の要件)。さらに、ひとえに「承継」といっても、①②③の各場面によって、承継人が受ける効果の内容には違いがあり、そうだとすれば、その効果の発生要件たる「承継」の内容も場面ごとに異なるはずである。本研究は、①②③の場面に応じた「承継」の要件を模索するものである。 また、各効果の発生要件を検討するにあたっては、そもそもその要件具備(=承継)によって生じた効果を承継人が受けるということは、具体的には何を意味するのかを明らかにする必要がある。本研究は、承継の要件を探求すると同時に、承継によってもたらされる承継人に対する効果の具体的な内容(=承継の意義)をも明らかにしようとするものである。 2019年度において本研究課題に取り組む前段階として、本研究課題と関連するテーマで論説を公表した(拙稿「区分所有法59条の競売請求訴訟と区分所有権の譲渡をめぐる諸問題」熊本法学145巻65頁(2019))。この論説は、上記3場面のうち、②既判力の拡張と、③執行の場面における「承継」の問題を取り扱ったものである。この論説の執筆を通じて、本研究課題に取り組むにあたっては、現段階において特に③場面の考察が足りていないことから、まずは、③「承継人」に対する「執行力」の拡張場面の議論――権利確認説と起訴責任転換説の対立――につき詳細を調査する必要性を実感した。 そこで、本年度は、この論説から得られた示唆を足掛かりとして、本研究の基本的な指針を検討するとともに、最終年度(2021年度)における論説の公表を目指す第一段階として、本研究課題に関する文献収集(特に日本語文献)に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述の通り、2019年度は、研究計画における第一段階として、本研究の基本的指針の検討と、関連文献の収集に努めた。その結果、学内および学外の図書館の利用・資料の取り寄せ・書籍の購入等により、「日本語」文献の多くを獲得することができた。中でも、先に述べた、直近に公表した論説の執筆を通して得られた実感に基づき、①訴訟承継、②既判力の拡張、③執行力の拡張の3場面のうち、主として③執行力の拡張場面における承継に関する問題(権利確認説〔吉村説・新堂説など〕と起訴責任転換説〔中野説など〕の対立)に注力した。 また、学外における研究会(日本民事訴訟法学会関西支部、関西民事訴訟法研究会、福岡民事訴訟法判例研究会等)への出席により、同分野の先生方から多くのご教示を賜ることができた。 一方で、「ドイツ語」文献の収集については、資料収集のために予定していたドイツ出張を、新型コロナウイルスの流行により断念したため、不十分な結果となってしまった。さらに、日本語文献の収集についても、論文のコピー等、軽く嵩張らないものについては十分に実施できたが、「書籍」等の重く嵩張るものについては、所属機関の変更のために入手を控えたこともあり、完全に実施するところまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続き、関連文献の収集に努める予定である。 とりわけ、2019年度に断念せざるを得なかった「ドイツ語」文献の収集につき、世界情勢に鑑みて、可能であれば、現地(ドイツ)に向かい実施したいと考えている。 また、2019年度において入手を控えた書籍(例えば、ドイツ法のコンメンタールや日本語の論文集等)につき、積極的に入手していきたい。 さらに、今年度の後半では、最終年度における論説の公表に向けて、収集した資料の整理・分析を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
・次年度使用額が生じた理由①:当該年度の3月末に、ドイツ出張(資料収集のため)を予定していたところ、新型コロナウイルスの流行により、取り止めたため。 ・次年度使用額が生じた理由②:当該年度の途中で、次年度における所属機関の変更が決まったことから、荷物を増やすことを避けるために、書籍等の購入を控えたため ・使用計画:世界情勢に鑑み、可能であれば、本年度予定していたドイツ出張を行う。また、本年度に購入予定であった書籍等を購入する。
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