2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13589
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
崔 佳榮 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (30816989)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 少子化政策 / 幼保無償化 / 政治過程 / 日韓比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日韓両国における少子化政策の拡充を促進または制限する政治的要因を突き止めることを目的とする。今年度は、日韓比較の論点を探るために、日本の事例、とりわけ「安倍政権の幼保無償化」の政治過程を検討した。まず、朝日新聞記事データベースを手がかりに、「幼保無償化」の展開過程を時系列にまとめた上で、内閣府・自民党・自治体などの資料から詳細な経緯を確認した。その結果、2017年の衆院選を境に、安倍政権が取り組んできた少子化政策の重きが「児童手当の拡充」と「待機児童の解消」から「幼保無償化」に変わったことが分かった。それまでキャッチフレーズに過ぎなかった「幼保無償化」だが、目標年度を示し、詳細を明らかにするなど、具体性を帯びたことで、実現に向けた取り組みが本格的に始まったのである。しかし、当時自民党内部では、「幼保無償化の少子化対策や女性の就労促進への政策効果は見込みにくい」ことを認識していた。それだけでなく、保育士不足は年々深刻さを増しており、それは待機児童問題に直結していることと、「幼保無償化」による需要増加は、待機児童問題のさらなる悪化に繋がりかねないことを鑑みると、やはり、「安倍政権はなぜその時点で幼保無償化の実現に乗り出したのか」という問いにたどり着く。そこで、「幼保無償化」の内容を詳しく分析することで、自民党が意図した真の目的を探るとともに、当時自民党が置かれていた政治的分脈を分析することで、「幼保無償化」を支持動員戦略として位置付けることを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、本研究が始まる時点で既に、保育政策の拡充、とりわけ「無償保育(保育・幼児教育の無償化)」に代表される韓国における少子化政策をめぐる政治過程を分析した単著『韓国の大統領制と保育政策:家族主義福祉レジームの変容』を出版しているため、韓国の事例はある程度熟知していた。そのため、今年度は、日韓比較の論点を探るために、日本の事例、とりわけ「安倍政権の幼保無償化」の政治過程を検討した。今年度に行った研究の結果、各政党(特に、与党)が追求する理念と、彼らが置かれている政治的分脈を分析することの有用性を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日韓比較のための分析枠組みをより明確にしつつ、本格的な比較研究に取り組む。その成果については、国内外の学術誌論文として積極的に発信する。
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Causes of Carryover |
転職を予定していたため、物品を控え目に購入した結果、次年度使用額が生じた。安定した研究環境が整ったので、本格的に研究に取り組むために必要な物品を購入し、研究成果も積極的に発信したい。
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