2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K13589
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
崔 佳榮 駒澤大学, 法学部, 講師 (30816989)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育政策 / 少子化対策 / 保育の無償化 / 幼児教育の無償化 / 幼保無償化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、保育サービスや出産育児休業給付など、少子化対策が充実していないという特徴が見られてきた日本や韓国において、近年少子化対策の一環として保育サービスを大幅に拡充してきたことに注目し、比較研究を行った。具体的な事例として、韓国(2013)と日本(2019)両国で実現した幼稚園や保育所等の利用料を無料にする幼児教育・保育の無償化の政治過程を検討した。その結果、ひとくちに「幼児教育・保育の無償化」といっても、その対象となるのは、日韓の間で大きく異なることが明らかになった。保育所への入所条件が設けられていない韓国では、保育を希望する全ての子どもが対象となる一方、保育所を利用するためには、保育の必要性を認めてもらう必要がある日本では、厳しい入所条件をクリアして初めて対象となれる。入所条件は自治体ごとに異なり、いろんな項目からなるが、母親の就労状況が最も重要な条件となる。重度の疾病や障害を持つかひとり親でない限り、働いていない母親が保育所に子どもを預けることは極めて難しいのである。このように、日本における幼児教育・保育の無償化は、「経済再生」を果たすために女性労働力を活用することを主な目的としているといえよう。ゆえに、同政策が提案され実現していく政治過程では、経済政策、特に社会的投資戦略に関わるアイディアが登場し、支持動員を図った。他方で、韓国において同政策は、家族政策(ジェンダー政策)の一環として認識されている。保育は家族(主に母親)ではなく社会の責任であるというアイディアが拡散することで、母親の就労状況は問われなくなったのである。日韓における幼児教育・保育の無償化の政治過程を検討することで、日韓の違いを明確にし、その要因を探ることができたことに意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、前年度の研究の結果を踏まえて「幼児教育・保育の無償化」を日韓比較の論点とし、同政策が提案され実現していく政治過程において、どのようなアイディアが登場し、変化していったのか、また、その理由は何かを検討した。その成果を2022年6月に行われる日本比較政治学会にて報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究を踏まえて、日韓における少子化政策をめぐる政治過程の全体像をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
前年度に続き、新型コロナ感染症の影響により、資料収集や研究発表のための国内外出張をすることができなかった。今年度は、コロナ感染症の収束の可能性が見られることから、積極的に研究活動を行う計画である。
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