2019 Fiscal Year Research-status Report
How Unpopular Policies were Made?
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19K13602
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
木寺 元 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (10433418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 税制 / 官僚制 / 不人気政策 / ネットワーク分析 / 日本政治 / プロスペクト理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度に実施した研究の関連する成果について、その具体的内容は以下である。 (1)木寺元「グラフ理論とQCAに基づく人事システム分析」『季刊行政管理研究』167、2019年 (2)木寺元「主権・分権 : 平成期の地方制度改革の過程分析を中心に (憲法の規整力(7-1)主権・分権)」『法律時報』 91(10)、2019年 (3)木寺元「消費税制と官僚制:税制をめぐる財務官僚のキャリアパスはどう変わったか?」『公共選択』(73)、2020年 本研究は、不人気政策の意思決定過程に着目する。「アクターは常に危険回避的」という前提では、不人気政策の意思決定過程を説明することは困難である。しかし、プロスペクト理論に基づけば、アクターが損失局面において、フレーミングの結果として不人気政策が局面をリカバリーする可能性のある利得をもたらすプロスペクト(選択肢)と判断すれば、危険愛好的な行動を選択する可能性がある。日本の官僚制においてはとくに人事(キャリアパス)が個々人の官僚にとってインセンティブとして大きな意味を持つ。(1)(2)は人事分析の先端的手法を進め、そのネットワーク分析の手法に基づいて(3)では本研究のテーマである消費税制を巡っての大蔵官僚(財務官僚)のキャリアパスを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」における令和元年度は、「オーラルヒストリーを実施するために必要な機器を整える。また、資料・文献の入手等を通じて、政策決定の背景にあったコ ンテクストや他者の証言など当時の予備的な調査を行う。あわせて、質的・量的分析の先端的な海外での研究動向を文献や実地調査等を踏まえ て習得する。その上で、インタビュー調査を行う。」とあった。コロナ禍前は、機器の取得、資料・文献の入手から実際に政治家のインタビュー実施にまで行き着き、極めて順調に推移してきた。 しかし、本研究は、EECの付加価値税導入により大蔵省内で検討が開始された1960年代半ばから消費税法成立の1988年まで制度導入にいたる過程を射程に入れることで、政治ドメインにおける不人気政策の意思決定モデルとしてのプロスペクト理論の可能性を検討していたが、当時を知る官僚アクターが高齢者であり、Zoom等を用いた遠隔インタビューが困難なこと、Covid19の重症化高リスク層であることなどから、インタビューの実現の目処が立っていない。すなわち令和2年度以降は大幅な変更が予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実施計画」における令和2年度は、「資料・文献の入手等を通じて、政策決定の背景にあったコンテクストや他者の証言など当時の予備的な調査を行う 。あわせて、質的・量的分析の先端的な海外での研究動向を文献や実地調査等を踏まえて習得する。可能であれば積極的に、国内外の学会・研 究会でも発表を行い、フィードバックを得る。引き続き、インタビュー調査を行う。 」とあった。しかし、上述の理由で、インタビュー調査が極めて困難な状態になっている。当初は補完的なものとして検討していた人事異動分析を通じたプロスペクト理論での説明の可能性に迫りたい。その上で、インタビュー調査を断念するのではなく、インタビュー調査が可能となる時機も待ちつつその準備も進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症にともなう聞き取り調査の当該年度の中止と次年度の延期によるものであり、令和2年度では聞き取り調査にかかる費用として使用予定。
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Research Products
(3 results)