2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13605
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
稲田 奏 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (10822207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会運動 / 資源動員 / カウンタープロテスト / 数理分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、社会運動における様々な資源動員の形態が、社会運動の帰結へ与える影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、抗議活動への資源動員と組織化への資源動員に着目し、その効果の違いについて検討する。これにより、社会運動への資源動員が増加するほど政府から譲歩を得られやすくなるという定説の妥当性を検討・修正する。 事業初年度にあたる2019年度は、数理分析を行い、どのような条件で抗議活動あるいは組織化への資源動員が、政府の意思決定に影響を与えるのかを理論的に検討した。分析の結果は次の通りである。第一に、現状維持を好むライバル団体が存在する場合、抗議活動への資源動員はカウンタープロテストの可能性を上昇させることが明らかになった。第二に、カウンタープロテストの発生は、政府による譲歩の可能性を低下させることが明らかになった。この2つの結果から、抗議活動への過度な資源動員は、かえって政府に対する脅しの効果を減じてしまうことが示された。第三に、抗議活動と運動団体の組織化の双方に資源を配分することにより、カウンタープロテストが抑制され、政府から譲歩を得られる可能性が改善されることが明らかになった。組織化という目的で資源を消費することにより、抗議活動へ利用可能な資源量が低下したこと信憑性のあるかたちでライバル団体及び政府へと示すことができるからである。 この研究成果はConflict Management and Peace Scienceへ掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった数理分析を完了し、海外査読誌への投稿を行うことができた。一方で、実証分析のための準備の開始が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
数理分析で得られた結果が経験的に妥当であるかどうかを、計量分析や事例分析を通じて多角的に検討していく。
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Causes of Carryover |
初年度後半から予定していたデータ収集の作業の開始が遅れたため、リサーチアシスタントの雇用のための予算を支出しなかった。
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