2021 Fiscal Year Annual Research Report
近代国際関係における雑居地樺太-国境未画定の時代-
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19K13617
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
醍醐 龍馬 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70802841)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本政治外交史 / 日露関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、明治初期の日露国境問題(樺太問題)に関し、樺太千島交換条約に至る道筋とその意義を多角的に論じることを目的とした。先行研究では、明治政府に対する駐日英国公使パークスの樺太放棄勧告の影響が強調されてきた。これに対し本研究では、従来思想分析の対象に留まってきた黒田清隆の樺太放棄論が、政府内の重層的な対立構造のなかで政策実現していく政治過程を跡付けた。黒田とその周辺の位置付けを明治初期にまで遡り明らかにしたことは、長州閥中心で描かれがちな明治政治史を薩摩閥の視点から再検討することにも繋がるだろう。また、国際要因としてはイギリスのみならずロシアの動きを直接的に把握しながら英露対立を等身大に描き、そこにアメリカの動向も加味することで、環オホーツク海をめぐる日英米露の複雑な対立構図を意識した日露関係の叙述を行うことができた。さらに、樺太問題の検討に留まらず、ロシア海軍が日露戦争までの間、長崎稲佐を越冬基地として利用していた事実を外交史的に検討し、1875年にその慣習が制度化した事実を樺太千島交換条約と併せて日露関係の画期と位置付けた。このような成果と、既に検討し終えているマリア・ルス号事件をめぐる国際仲裁裁判の研究とを繋ぎ合わせる作業も進めた。以上によりこれまで取り組んできた明治初期日露関係史の研究は事実上完了し、今後日露戦争への道を研究していく上で基礎となる前史の部分をここに固めることが出来た。
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