2019 Fiscal Year Research-status Report
国際関係における弱者の意思表示メカニズム:米国ピースコーの追放をめぐる検証
Project/Area Number |
19K13624
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河内 久実子 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 特任教員(助教) (30732664)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 米国平和部隊(ピースコー) / 反米運動 / ラテンアメリカ / ボランティア / 進歩のための同盟 / 国際協力 / 援助外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費では、ラテンアメリカ地域におけるピースコーの追放事例を比較検証することにより、国際協力事業を通したラテンアメリカ貯穀の米国派遣への抵抗のメカニズムを明らかにすることである。 2019年度は米国(9月)とエクアドル(2月)にて海外調査を行ない、米国ではテキサス大学のLBJ大統領図書館やベンソンコレクションにてアーカイブ調査、インタビュー調査、文献収集を行うことができた。テキサス大学における調査では、ボリビアとペルーの現地紙の収集ができたことが特に大きな収穫であった。南米の現地紙の収集ができたため、冷戦期のピースコーが受入れ国(host country)からどのように評価されていたのかを分析する手がかりを入手できた。この9月の調査では、ペルーとボリビアに関する調査が進み、2019年11月の国際開発学会で研究の中間成果をピースコーと類似する協力隊(現JICA協力隊)と比較し発表した。論文投稿に関しては「研究活動スタート支援」時から継続してきたピースコーのボリビア追放に関する事例研究論を完成させ、2019年11月に「反米運動から平和部隊の追放へーボリビア追放事例の可視化から見る政府系国際ボランティアの課題ー」を投稿し『国際開発研究』に掲載された。2月には、半世紀以上にわたってボランティアを受け入れ続けているエクアドルでフィールドワークを行ない、継続国としての特徴の調査を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、米国テキサス大学とエクアドルにて合計2回の海外調査を行った。その結果、必要なデータの収集が効率的にできた。初年度に2回の調査に出かけたことにより、論文の執筆や2020年度以降の研究計画の調整が可能となり、おおむね順調に研究は進んでいる。また、本年度は所属機関の研究費も獲得したことから、2回の海外調査が可能となったことも申し添えたい。本研究の目的は、ラテンアメリカ地域で起こったピースコーの追放をとりまく事象とその意味を明らかにすることであり、下記3つの項目を明らかにするための調査を行う必要がある。①追放の要因(政府・組織)、②追放交渉の内容(政府・組織)、③現地で活動する隊員を取り巻く状況の分析を行うことである。現在、ボリビア、ペルー、ブラジル、パナマの追放に関する①番と②番の組織レベルにおけるデータ収集は、ほぼ完了しており、ボリビアに関しては本年度論文にまとめ投稿することができた。ピースコーの任国間の比較についても、①と②の分析を中心に進めており、ほぼデータの分析が完了している。そのため5月下旬に予定されている日本ラテンアメリカ学会(AJEL)での報告(新型コロナのため中止)と『ラテンアメリカ研究年報』への2020年10月~12月の投稿をめざし現在執筆を進めている。③番の現地で活動する隊員の経験に係る調査に関しては、2019年度は大きな進捗はなかった。エクアドルのピースコー事務所やテキサス大学で元隊員へのインタビューは行ったが、予備調査に値するもので、今後、さらに設問をしぼり、インタビュー調査や主に隊員の手紙や音声資料などをアーカイブや大学で収集し分析を行う予定である。研究活動スタート支援と本科研費での成果をまとめた本を出版するために、本年度は本の執筆も開始し出版社に企画の紹介なども開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方法については大きな変更点はない。2020年度は、米国の公文書館とアメリカン大学(両機関ともワシントンDC近郊)におけるアーカイブ調査を行いたいと考えている。2020年度の公文書館での調査は、隊員レベルの調査にフォーカスすることに加え、ピースコーの受入れ継続国に関するデータも補強する予定である。また、アーカイブ調査を完了した後、ラテンアメリカ最大の受入れ継続国であるエクアドルで聞き取り調査とアーカイブ調査を行う予定である。ただし、コロナウィルスの拡大が懸念されているため、フィールド調査の延期を余技なくされることも考え、調査地とはメールでのやりとりに加え、情報収集に努めながら研究計画を調整していく予定である。本採択課題と全採択課題を合わせた単著の執筆もすすめる予定である。
|
Causes of Carryover |
2020年初め頃に注文していた書籍数冊が海外から届かず、一度キャンセルし再度次年度に注文することとしたため。
|
Research Products
(2 results)