2021 Fiscal Year Research-status Report
国際関係における弱者の意思表示メカニズム:米国ピースコーの追放をめぐる検証
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19K13624
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河内 久実子 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 特任教員(助教) (30732664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際協力 / ボランティア研究 / ソフトパワー / ラテンアメリカ地域 / 米国外交政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本採択課題では、冷戦下のラテンアメリカ地域におけるピースコー(米国平和部隊)の追放事例を比較検証することにより、国際協力事業を通したラテンアメリカ諸国の米国覇権に対する抵抗のメカニズムを明らかにすることである。上記の目的を明らかにするために、以下3つの項目を立てて研究を進めている:①追放の要因(政府・組織レベルでの分析)、②追放交渉の内容(政府・組織レベルでの分析)、③ 追放を経験したピースコー隊員を取り巻く状況(ボランティア個人の記録からの分析)。国や組織レベルの分析に加え、③の個人レベルの分析を加えることにより、政府系ボランティア事業の追放という事象をより多角的に検証し、追放による個人レベル(ボランティアたち)への影響の有無等も併せて明らかにする。 2019年度や2020年度初期には、海外にてデータの収集を行なった。よって、①と②の部分に関して論文執筆を進め、雑誌投稿のプロセスに入っている。①と②の調査結果として、ラテンアメリカ地域5カ国のピースコーを追放した国には、共通した背景や特徴があることが明らかとなった。外的な要因としても、すでに他地域でピースコー追放の前例があり、それにラテンアメリカ地域の国々が追従した可能性があることがわかった(追放理由に類似性があった)。今後の可能性として、ピースコーを追放した国々には、追放時、多角的な外交関係の構築を積極的に行う共通点が見えたため、冷戦期におけるピースコーの追放は、ラテンアメリカ地域にとって米国からの経済的な独立を目指す初期段階の兆候として位置付けられる可能性が見え、今後の課題が見えた。③番の項目に関しては、米国立公文書館やアメリカン大学、LBJ図書館などで収集したデータの一部分析のプロセスに入っているが、ボランティア個人レベルを分析するには充分なデータ量ではないため、来年度は米国へ行き、データ収集を実施したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も引き続きCOVID-19の感染拡大により、計画していた③番にかかる現地調査を行なうことが出来なかった。そのため、本採択課題の3つ目のテーマの分析が行き詰ってしまった。しかし、これまで収集してきたデータの分析、新しい先行研究をより深くあたり、2020年度に不採択となった論文を大幅に改稿する努力をした。その論文が完成し、2022年2月、学会誌に投稿し、現在査読プロセス中である。本採択課題では、すでに入手したデータを用い、ピースコー隊員の音声データや手紙などの分析を行うので、研究手法に関しても様々な文献を入手し、分析レベルを上げることができるよう備えている。著書の執筆も前年度と比較して進んだが、2章分ほど進んだのみで、来年度も引き続き執筆する必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、COVID-19の感染状況が改善した時点で現地調査を再開しデータ収集を完了させる予定である。③番(隊員個人の経験の分析)の部分に関しては、隊員個々の手紙やレポートや音声などのデータの分析中であるが、グラウンテッド・セオリーなど、新しい手法に沿って調査と分析を進めており、来年度学会や研究会で発表する予定である。ピースコーの追放のメカニズムを明らかにする際にドミニカ共和国の事例が、重要であると考えており、こちらも追加の調査行う予定である。その研究成果は、明石書店から出版されるドミニカ共和国に関する書籍の分担執筆者として執筆・発表する予定である(2022年12月原稿提出予定)。また、ドミニカ共和国の事例の整理が完了した時点で、これまで取り組んできた他事例と比較し、国際ボランティア事業がソフトパワーのツールとしての位置付けに関する調査を行い、国際学会及び国際雑誌への投稿も視野に入れ取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、現地調査のために積んでいた旅費や国内学会等に係る旅費が未執行となってしまった。現地調査で得る予定であったデータは、2022年度に米国国立公文書館やアメリカン大学で調査し収集する予定である。新型コロナ感染症が収束しなかった場合は、割高ではあるが、司書による複写サービス等を利用し、日本へデータを送付してもらうことも検討している。書籍執筆やデータ分析のために、引き続きリサーチアシスタントも雇用する予定である。新型コロナ感染症の状況をみつつ、翌年度以降の調査に2020年度分の予算を繰り越して使用する予定である。
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Research Products
(1 results)