2022 Fiscal Year Research-status Report
国際関係における弱者の意思表示メカニズム:米国ピースコーの追放をめぐる検証
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19K13624
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河内 久実子 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 講師 (30732664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ボランティア研究 / 市民外交 / ラテンアメリカ地域 / 平和部隊 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本採択課題では、冷戦下のラテンアメリカ地域におけるピースコー(米国平和部隊)の追放事例を比較検証することにより、国際協力事業を通したラテンアメリカ諸国の米国覇権に対する抵抗のメカニズムを明らかにすることを目的としている。研究目的を達成するため、以下3つの項目を立て進めている。(1)追放の要因(政府・組織レベルでの分析)、(2)追放交渉の内容(政府・組織レベルでの分析)、(3)追放を経験したピースコー隊員を取り巻く状況(ボランティア個人の記録分析)。国や組織レベルの分析に加え、(3)の個人レベルの分析を加えることにより、政府系ボランティア事業の追放という事象をより多角的に検証し、追放による個人レベル(各ボランティア)への影響の有無等も併せて明らかにする。 2020年2月以前の海外調査で得たデータにて、上記の(1)と(2)の部分に関して、2021年度は分析と執筆に取り組んだ。その結果、2022年春に『国際開発研究』にて、論文が掲載された。2023年6月の「日本ラテンアメリカ学会」では、ドミニカ共和国を事例として、米国公文書のデータ分析をもとに、調査結果を発表した。ドミニカ共和国のピースコーの事例について、詳細に調査することに至った経緯としては、追放に踏み切った5か国との比較をより詳細に行うために、ドミニカ共和国の事例が鍵になると考えたためである。その結果、2023年2月にドミニカ共和国で現地調査を行った。インタビューや国立公文書館(Achivo General de Nacion)における文献収集を中心に、ピースコーに関する報道や米国侵攻時におけるドミニカ共和国市民の様子に関する報道資料を主要新聞数社のデータべースで入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況に遅れが出た要因としては、新型コロナウィルス感染症蔓延のため、海外調査ができなかった点とボランティア個々がどのように米国外交政策に翻弄される中で、隊員個人の手記に当たった結果、追放に関して深く触れているものが非常に少なく、また政治的な見解に関する記録にも個人差が大きく、各国のデータが思ったように入手が進まなかったことが挙げられる。 現在は、追放された国のボランティアだけでなく、冷戦下において米国外交政策の影響を色濃く受けたドミニカ共和国のような国におけるデータも含め分析することで対処している。2022年度2月から3月にかけて、海外にて現地調査を実施できたことが、この打開策をもたらし、当時の研究目的と大きくずれることなく、ボランティア個人レベルの経験に関する分析を進められると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、まだ足りないデータを精査しつつ、現地調査を再度行う予定でありデータ収集を完了させる予定である。その研究成果は、明石書店から出版されるドミニカ共和国に関する書籍の分担執筆者として執筆・発表する予定であり(2023年12月初稿提出予定)。 また、ドミニカ共和国の事例の整理が完了した時点で、これまで取り組んできた追放事例と比較したうえで、米国覇権への抵抗メカニズムを平和部隊の事例を通して説明した論文を英語で執筆することを目標としている。
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Causes of Carryover |
データ収集半ばで、新型コロナウィルス感染症が蔓延したため、海外での調査が不可能であった。およそ2年以上、本来海外調査に行くための予算が執行できなかったため、次年度使用額が発生した。使用計画としては、海外調査の旅費、リサーチアシスタント雇用費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)