2023 Fiscal Year Research-status Report
国際関係における弱者の意思表示メカニズム:米国ピースコーの追放をめぐる検証
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19K13624
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
河内 久実子 横浜国立大学, 国際戦略推進機構, 講師 (30732664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラテンアメリカ地域研究 / ボランティア研究 / 冷戦 / 市民外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本採択課題では、冷戦下のラテンアメリカ地域におけるピースコー(米国平和部隊)の追放事例を比較検証することにより、国際協力事業を通したラテンアメリカ諸国の米国覇権に対する抵抗のメカニズムを明らかにすることを目的としている。研究目的を達成するため、以下3つの項目を立て進めている。(1)追放の要因(政府・組織レベルでの分析)、(2)追放交渉の内容(政府・組織レベルでの分析)、(3)追放を経験したピースコー隊員を取り巻く状況(ボランティア個人の記録分析)。国や組織レベルの分析に加え、(3)の個人レベルの分析を加えることにより、政府系ボランティア事業の追放という事象をより多角的に検証し、追放による個人レベル(各ボランティア)への影響の有無等も併せて明らかにする。 2020年2月以前の海外調査で得たデータにて、上記の(1)と(2)の部分に関して、2021年度は分析と執筆に取り組んだ。その結果、2022年に『国際開発研究』に論文が掲載された。 追放事例の分析に合わせ、1965年のドミニカ共和国への米国軍事侵攻時におけるピースコーの役割の分析の重要性を感じ、2023年2月から3月にかけ、ドミニカ共和国の公文書館を中心にフィールドワークを行った。ドミニカ共和国におけるピースコーに関する報道、米国海兵隊による侵攻の市民の様子や対米感情に関する報道資料を主要新聞数社のデータべースで入手した。ドミニカ共和国側の資料とアメリカン大学で入手したピースコー隊員の手記や手紙をもとに、2023年は研究ノート「1965年ドミニカ共和国軍事侵攻と米国平和部隊―ソフトパワーとしての役割と限界点に着目して―」の掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症蔓延の時期に、データ収集ができなくなってしまったことが大きく影響し、研究計画が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度中にデータの収集が完了したので、2024年度はこれまで取り組んできたピースコーの追放事例とドミニカ共和国の米海兵隊による軍事侵攻時のピースコーの動きを調査して得たデータを加え、論文を執筆中である。今年の11月末までに英語論文の国際誌への投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度の研究費は30万程度の残額があったが、円安傾向が年々強まり、本科研費が採択された時点より、航空費も米国での滞在費も上がってしまい、最終年度の昨年にフィールド調査を予定していたが、他の研究費と合わせても予定していた海外調査を行うには足りない金額となってしまった。そのため、使用計画を変更し、論文執筆のための校閲サービスの利用に用途を変更することにした。2024年度中に論文執筆作業が完了するため、校閲サービス料と国内学会の費用として次年度使用させていただく計画である。
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