2022 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける過激主義の展開と脱過激化をめぐる政治
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19K13637
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (50822889)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タイ深南部 / マレー・ナショナリズム / イスラーム主義 / サラフィー主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
1960年代以降マレー・ナショナリズムに基づく分離主義運動が続いてきたタイ深南部では、2004年以降、タイ政府と分離独立を掲げる武装組織との間での抗争が激化した。2001年にアメリカで生じた9.11同時多発テロ事件や2002年のバリ島爆弾テロ事件を受けて、タイにおいてもイスラーム過激主義の影響が懸念されるようになった。 しかし一般的に「過激主義」の代名詞として用いられることも多かった原点回帰的なサラフィー主義は、タイ政府と敵対関係にはないことが明らかになっている。本研究は、宗教と「過激主義」の問題を、東南アジア地域の文脈、とりわけマレー半島とタイ深南部の事例においてとらえなおすことを目的として、文献調査およびタイ、マレーシアでの現地調査を実施してきた。 2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大によって現地調査が困難となったものの、文献調査を軸に据えつつ、インタビューはオンラインでの調査に切り替えて実施してきた。2000年代以降、サラフィー主義やイスラーム主義に関する成果が増え、各国・地域の事例を踏まえたサラフィー主義内部の潮流やその多様性に関する研究も進んできた。こうした成果も踏まえつつ、2022年度は、タイ深南部の文脈でサラフィー主義が登場した背景とその主張についての文献調査、そして、伝統社会でのサラフィー主義に対する反発あるいはその受容について行ってきたインタビュー調査の結果を、単著『イスラーム改革派と社会統合:マレー・ナショナリズムの変容』としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、これまでの成果を単著としてまとめることに注力したため、内容に対するフィードバックなどを得ることが十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2度の延長を経た最終年度である2023年度は、単著でまとめた成果を広く周知し、今後の研究につなげるためのフィードバックを得ることを主な目的として設定している。
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Causes of Carryover |
前年度内に、単著としてまとめた成果の周知やフィードバックを得る作業を行うことができなかった。今年度は、これらの作業を行うために助成金を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)