2020 Fiscal Year Research-status Report
望ましい利益配分を目指して: 協力ゲームの解の公理的分析
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19K13651
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中田 里志 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (90822453)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 協力ゲーム / 配分ルール / シャープレー値 / コア / ポテンシャル / 提携構造 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
協力ゲーム理論における主要な研究課題の一つは, 望ましい利益の配分ルールの基礎づけを行うことである.これまで様々な配分ルールが考案されてきたが, その中でも最も重要であり多くの応用がなされているものがコアとシャープレー値である.コア配分は, 提示された配分からどのような集団による逸脱も招かないという安定性を持つものである.コアは一般に複数の配分を含む集合であり, 考えるゲームのクラスによってはコア配分は存在しないこともある. 一方シャープレー値は, 各プレイヤーが自身の貢献度に応じた配分を受け取るような成果主義的な配分ルールである.シャープレー値はコア配分となり安定性を持つこともあればそうでないこともある. 本年度の研究成果の一つとして, シャープレー値がコア配分になるような条件について, 完全な特徴づけを行うことができた.また, そこで用いた方法はシャープレー値以外の線形性を持つ多くの配分ルールにも適用可能性があることも示した. 二つ目の研究成果として, シャープレー値が持つポテンシャルという性質に注目し, ポテンシャルを持つような配分ルールがどのようなものであるかについて特徴づけを行った. 効率性を満たしポテンシャルを持つような配分ルールはシャープレー値のみであるが, ポテンシャルのみに注目すると様々なルールが該当する.また, ポテンシャルを持つことが含意する規範的な性質を明らかにし, 効率性の追加がなぜシャープレー値を導くかについての論理構造も明らかにした.特に, 配分ルールをプレイヤー集合が固定されたもとで考える場合と, プレイヤーの集合が可変である場合では異なる論理構造により同じ結果が導かれることも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は, 協力ゲームの解の公理的な分析に関して上記概要で記載した通り, 大きく二つの結果を得ることができた.
一つ目は, シャープレー値がコア配分としての安定性を持つようなゲームについての特徴づけである. このようなゲーム全体の集合はある凸錐を構成することをこれまでの研究で明らかにしていたが, 凸錐を構成する端点に当たるゲームの構造を特徴づけるには至っていなかった. 一般に凸錐の端点を陽な形で表すことは困難であり大きな課題であったが, これを克服する方法を考案し解決することができた.これにより, シャープレー値がコア配分になるようなゲームは, いくつかのより簡単なゲームの和に分解できることを示すことができた.
二つ目は, ポテンシャルを持つような配分ルールのクラスの表現形式を与える共に, 背後にある規範的な性質を明らかにした.通常ポテンシャル関数はプレイヤー集合が可変であるような場合に定義されその性質が分析されてきた.特に, 効率性を満たしポテンシャルを持つような配分ルールはシャープレー値のみであることが知られているが, その論理構造はプレイヤー集合が固定されている場合と可変である場合では大きく異なる事も明らかにした. 新たな知見の一つとして, プレイヤー集合が固定されている場合には, ポテンシャルを持つ配分ルールはそれ自体がシャープレー値を基礎付ける性質の一部を有しており, 効率性が追加的に果たす役割は配分ルールが線形となることを保証することであることを示した.これにより, シャープレーによる古典的な結果との関係性をより明白にすることができた. また, 線形性を満たしかつポテンシャルを有するような配分ルールの全体も特徴付けた.
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Strategy for Future Research Activity |
現在, これまで得られた結果を論文にまとめている最中であるが, これらを国際査読誌に掲載することを目標に研究を進める.
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19の影響により参加を計画していた国際学会の全てが延期もしくは中止となり, それに伴って旅費・学会参加費用としての支出を計画通りに行うことができなかった.次年度も状況が完全に改善する見込みはないが, 延期にされた学会への参加を含めた使用を行う.
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