2020 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative macroeconomic study on the U.S. childcare market.
Project/Area Number |
19K13678
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久保田 荘 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (00814352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保育市場 / 保育補助金 / 特別定額給付金 / 新型コロナウイルス / 消費喚起効果 / SIRモデル / 異質的家計のマクロモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
メインの米国保育市場の分析について、本年度はまずファクトファインディングについてワーキングペーパーとしてまとめた上でいくつかの雑誌に投稿を行なった。しかし、異質性を考慮した構造モデルが欲しいという共通したレフェリーコメントを受け取ってrejectionされてしまった。そのため、昨年度より並行して続けていた数量マクロモデルによる研究を統合してもう一度再構成させることにした。神戸大学の松田一茂氏と共に、モデルの数値計算を継続している。 追加して、現状の経済・社会情勢を鑑みて、筆者の行ってきた家族の経済学の実証手法の応用、また数量マクロモデルの数値計算手法を利用して、コロナ危機についての研究を行うことにした。前者については、2020年に配布された10万円特別定額給付金について、日本の家計がどのように消費行動を行なったか政策効果の検証を行なった。2編論文を執筆し、ひとつはみずほ銀行の280万口座個票統計、もうひとつはマネーフォワード社の23万ユーザーの家計簿アプリデータを利用して消費行動を分析した。給付金支給日が行政手続きの遅れによって家計ごとに異なったという事象を自然実験として利用して差の差推定を行なった。これは、筆者が米国の保育市場を分析してきた州別データを利用した家族行動の推計手法を応用している。本研究計画の特性上、子育て家計の消費行動に特に着目したが、他の家計との大きな差は見られなかった。 また、本研究で培ってきた数量マクロ経済モデルの手法を持ちいて、新型コロナウイルス感染に関する疫学モデルと、動学的一般均衡モデルを統合したSIR-Macroモデルの研究を行なった。3編の論文を執筆したが、特に日本の緊急事態宣言の解除シナリオを現在進行形で行なった分析は、新型コロナウイルス感染症対策分科会に提出され、西村康稔経済再生担当大臣の記者会見で紹介されるなど、政策提言に繋がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の米国保育士上の研究については遅れが見られている。特に、研究を加速させるためにプロジェクトをファクトファインディングと数値計算の2つに分けて前者の出版を急いだものの、この目論見がうまく行かなかった。現在は両方を1編の論文として再度統合する方針に戻した。時間がかかってしまった分、ビッグペーパーとしてまとめたい。 関連研究として始めた、コロナ禍の家計消費およびSIR-Macroモデルについては非常に早く進んだ。特に、現状を反映して48時間の査読を行なっている、Covid Economics, Vetted and Real-Time Papersに3編の論文を掲載できた。このうちの1編はJournal of Economic Behavior and Organizationに正式掲載が決まり、他の2編も学術誌にrevision、またinvitationされている。さらに、日本語で執筆した1編は医療経済研究に正式に掲載され、現在の社会経済状況を鑑みて紙媒体の出版前からオンライン先行公開されている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、当初から継続しているプロジェクトについては、継続して神戸大学の松田一茂氏と共にモデルの数値計算を行い、ファクトファインディング、実証、数値計算を組み合わせたペーパーとしての出版を目指す。コロナ危機の家族行動の研究については、マネーフォワード社の詳細な家計簿データを利用することができるようになったため、例えばひとり親世帯とその他の世帯の不平等の拡大(いわゆるK字回復の一種)などについて解析を試みる予定である。さらに、数量マクロモデルの数値計算手法を応用したコロナウイルス感染及び経済損失の分析については、本年4月からの緊急事態宣言の解除シナリオについて、ワクチンスケジュールや変異株等も含めたモデルの解析を行なっており、政策に役立てるよう活動を行なっていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、自分の研究計画を応用してコロナ危機関連で予想以上に多くの論文を書くことになり、英文校正費がかさんだことによる。次年度は少数の論文に集中する。
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Research Products
(16 results)