2020 Fiscal Year Research-status Report
ガス市場における供給コストとスイッチングコストに関する実証研究:競争進展に向けて
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19K13687
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野方 大輔 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (20614621)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガス事業 / スイッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、日本国内における家計の都市ガスのスイッチング行動にフォーカスして、競争を進展させていくうえでの課題を、既存資料、関連研究、個票データに基づく実証分析によって整理した。 都市ガスの新規サプライヤーの割合や契約スイッチング率は、電力市場(および他国のガス市場)のそれに比べて低いが、その傾向は都市ガスのパイプラインネットワークが比較的発達している地域においてもみられる。このような都市ガス市場の動向から、インフラ面以外で小売契約のスイッチングを妨げる要因(スイッチングコストあるいはスイッチングバリアと呼ばれる)の存在が推察される。こうした問題意識をもとに、日本国内の世帯にスイッチングに関わる意識を問うアンケートを日本各地の年齢・人口分布にもとづいて実施し、20代から70代までの男女から偏りなくサンプルを収集した。アンケート分析の結果、日本の家計は、新規参入者の設定する拘束力のある契約内容(たとえば電気・ガス・インターネットのセット割、一定期間内の解約によって割引の対象から外れること等)、新規参入者のガス保安検査の品質や経営の安定性に対して懸念を持ち、サプライヤーを切り替えていない可能性がある。一方で、スイッチングを促すうえで、電力市場や他市場における同様の経験が有用である可能性がある。伝統的な情報源(たとえば新聞)から自由化に関わる情報を得た家計は、スイッチングを検討する可能性が高いことも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家計のスイッチング行動のアンケート分析結果をオンラインの研究会で報告し、そこでのコメントをもとに修正した論文を、エネルギー関連の査読誌に投稿中である。 なお、本研究計画における実証分析のアイディアを別プロジェクトの個票分析にも応用し、その副次的な成果が査読誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はアンケートを用いた家計の実証分析が主であったが、今後は公表データを用いて、予定通り事業者側の分析をおこなう。ただし、家計のアンケート調査費用が当初の想定以上にかかったため、事業者分析については、調査項目を絞るか、公表データで研究計画を完遂できるようデータセットを再構成する必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によって、学会や研究会が殆どオンラインか中止となる事態が生じ、オンライン対応の物品購入が発生したものの、旅費の未使用額がそれ以上に大きくなったためである。繰り越した金額は、今後学会や研究会に参加するための旅費として利用する予定であるが、社会情勢に合わせて柔軟に予算を執行する。
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