2023 Fiscal Year Research-status Report
生活保護に関する実証分析:空間経済モデルによる考察
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19K13732
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
檜 康子 大阪商業大学, 経済学部, 講師 (30761514)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活保護 / コーホート |
Outline of Annual Research Achievements |
生活保護の要因について時系列分析を行った。時系列分析を行うことにより生活保護率の上昇が時間を通じて長期にわたり特定の世代に影響を及ぼすか検証を行っている。2023年度においては被保護者の年齢や世帯人数の類似性を空間的な距離と捉え、被保護世帯の世帯主の年齢や世帯人数間の類似性を距離として見なして分析を行った。 まずは、世帯類型、世帯主の年齢と世帯人数による生活保護率の違いや相互関係に関しての分析を行うために、厚生労働省「被保護者全国一斉調査」、「被保護者調査」の1986年から2020年の年次データをはじめとするデータセットの構築を行った。 構築したデータセットに基づき、世帯主の世代的な要因が生活保護の需給状況に影響を及ぼしている可能性を確認するために、コーホートによる分析を行った。コーホートダミーを使用した簡単な固定効果モデルの推計によると、バブル就職世代(1965年から1969年生まれとした)と比較して、就職氷河期の初期(1970年から1974年生まれ)の世代の生活保護率が高くなるという結果を得た。学卒時の労働市場の需給状況はその後の雇用や賃金に対して長期的な悪影響を持つことが知られているが、生活保護へも影響することを示す結果である。これは簡単なモデルの推定による分析であるため、さらなるモデルの精緻化と頑健性のチェックを行う予定である。同様の分析は母子世帯にも適用する。現時点での60歳以上の高齢世帯に関する分析では、新しいコーホートほど生活保護率が高くなっており、日本の人口構成的な高齢化が生活保護世帯を増やしているだけでなく、景気要因以外にも高齢者の生活保護を増加させる社会的要因が背景に存在していることを示しており、この要因分析も引き続き行うことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度の研究は進展したものの、これまでの新型コロナ感染症の影響による分析の遅れから研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は現在行っている分析をすすめるとともに、これまでに得られた分析結果をまとめ、学会報告や雑誌論文としての公開準備をおこなう。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では学会参加のための旅費等を計上していたが、新型コロナウィルス感染症拡大による移動の制約のために予定通りの予算執行ができていなかった。2024年度は学会等参加のための旅費相当分を繰り越している。
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