2019 Fiscal Year Research-status Report
1970~80年代における資本自由化の進展と経常収支不均衡の拡大
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19K13756
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西川 輝 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30622633)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブレトンウッズ体制 / 経常収支不均衡 / 資本自由化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1970~80年代における国際金融システムの構造転換、すなわちブレトンウッズ体制の崩壊と金融グローバル化への転換が、現在に至る世界的な経常収支不均衡の拡大とどのように関連しているのか解明することにある。具体的には、資本移動の自由化が主要国の経済政策と金融市場にどのような影響を与えたのか検討しながら、経常収支不均衡の拡大過程について解明することを目的としている。 研究開始初年度にあたる2019年度においては、包括的な先行研究の収集とサーベイに加え、IMF、OECD、BISといった諸機関の資料およびデータの解析を行い、ブレトンウッズ体制期(第二次大戦終了から1970年代初頭まで)における資本自由化の進展と経常収支不均衡との関連性について検討した論考を発表した。これまでの研究では、1970年代初頭までのブレトンウッズ体制期は、自律的な経済政策と安定した為替相場の下で国際収支の不均衡が抑制された時期であったが、これを可能にしたのが資本移動に対する規制であったとされてきた。そして国際金融市場の復活と資本移動の活発化によって、安定したブレトンウッズ体制が崩壊し、1970~80年代を通し金融グローバル化の枠組みへと国際金融システムの再編が進んだとされてきた。他方、当年度の研究によって、①すでにブレトンウッズ体制の初期から資本規制の維持はコンセンサスではなく、各国の主要な政策目標は為替相場の安定にあったこと、②次第に国際収支不均衡が拡大するなかにあってなお為替相場の調整は十分になされず、部分的とはいえ資本移動が国際収支不均衡をファイナンスする手段として機能しつつあったこと等、既存の研究とは異なる分析結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度においては、包括的な先行研究のサーベイに加え、IMF、OECD、BIS、サミットなど国際機関の刊行する政策文書の収集とその解析を行うことを目標とした。これらの作業のうち、政策文書の収集は完了している。さらにその解析についても1970年代中葉までは終了しており、上記「研究実績の概要」で述べたように、その成果の一部についてはすでに論文を作成し発表している。以上より、2019年度の進捗状況について、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の作業を基礎に、当初の計画通り、2020年度においても最新の先行研究についてサーベイを継続するとともに国際機関の刊行する政策文書の解析を進める。
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Causes of Carryover |
(理由)当初、サミット関連の文書についてアメリカ国立公文書館への資料調査を計画していたが、サミットを構成する主要国が独自に発表する年次報告書等の文書での代替が可能であると判断したため、それらのサーベイを優先し調査を見送った。この結果、外国旅費および資料調査に関連して計上した機材費、資料整理のための複写費・謝金の出費がなく、次年度使用額が生じた。 (使用計画)資料およびデータの解析作業を通し国内外の史料館における調査が必要であると判断された場合、速やかに出張を遂行する。こうした追加的な資料調査を実施しない場合は、それら資料の代替的な素材である文献資料・データ等の購入費用に充当する予定である。
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