2019 Fiscal Year Research-status Report
地方創生におけるチェンジ・エージェントの役割と場の生成・発展に関する研究
Project/Area Number |
19K13777
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
根岸 裕孝 宮崎大学, 地域資源創成学部, 教授 (60336287)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地方創生 / チェンジ・エージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、日南市油津商店街における場のマネジメントの実態把握に努めるとともに、その後の展開をフォローアップに注力した。特に、チェンジ・エージェントであったK氏の退任後も日南市および油津地域の地域づくりに関する「場」が継続的に機能していることを確認した。その事例の1つとして市内の高校生が商店街再生にむけた取り組みとして壊れたアーケイドをビニール傘を集めて覆う「アンブレラスカイ」は、クラウドファンディングにより中心市街地再生を願う市民が結集した事業となった。さらに、同商店街にはレコードコミュニティ拠点形成も形成される等、都市論等で議論される「空間」から「場所」への転換が図られ、創造活動の場として意義あるものと考えられる。経営学の組織開発の視点を踏まえつつ都市・地域計画からの視点を加味した同商店街の進化・発展について考察を行った。 また、令和2年度以降に予定していた全国における事例収集に向けて鹿児島県内のK町の事例について予備的な現地ヒアリングと情報収集を実施した。同町は、外部から町の地方創生事業の中核となる協議会に外部人材5名を雇用し、新たな地方創生事業を展開した。しかし、こうした外部人材の導入をはじめとした事業が町民の理解を得られず、外部人材の多くが結果として町外へ転出した。チェンジ・エージェントによる組織開発の失敗事例として貴重な事例である。一方、宮崎県内のS町の事例では、観光協会を改組した財団を核として外部から人材を招聘し、新たな地方創生プロジェクトの場として機能している事例も確認できた。さらに一連の研究とともに経営学における地域経営という新たな領域の可能性のステップとして実践経営学会にて地域資源を活かすという視点から地域経営と廃校活用に関する研究について報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は、宮崎県日南市油津商店街の再生事例における外部招聘型チェンジ・エージェントによる「場」のマネジメント機能および「場」の進化・発展(自己組織化)の解明を掲げた。そのため油津商店街のその後の進化・発展にむけた事例の収集(アンブレラスカイ・レコードコミュニティ拠点形成・インターンシップ事業等)の事業を注視し情報収集に努めた。また、同商店街が「空間」から「場所」への転換することの意義づけについて都市・地域計画の視点も踏まえてその意義について考察を行った。ただし、こうした中心市街地が商況空間から創造の場へと転換するプロセスに関して考察を進めながらも、油津商店街関係者に対するヒアリングは、十分とは言えない状況にある。また、チェンジ・エージェントや場に関する理論の整理も途中段階にある。 また、令和2年度以降の全国事例の収集にむけた予備調査として鹿児島県のK町の事例を調査した。同町は、外部から町の地方創生事業の中核となる協議会に外部人材5名を雇用し、新たな地方創生事業を展開した。しかし、ヒアリングによれば、この外部人材導入による諸般の事業が町民の理解を得られず、外部人材の多くが結果として町外へ転出した。地方創生の分野においてチェンジ・エージェントによる組織開発の失敗事例としてとらえることができ、こうしたチェンジ・エージェント導入が必ずしも上手くいくとは限らないことを示している。また、宮崎県S町の事例では、観光協会を改組した財団を核として外部から人材を招聘し、新たな地方創生プロジェクトの場として機能している事例も確認できた。これらの予備的考察により令和2年度以降における比較分析による成果をイメージすることができた。 さらに実践経営学会にて地域経営と廃校活用に関する研究について報告を行った。地域経営論について経営学の視点からのアプローチの意義について検討する契機となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は3つにわけることができる。第1は、油津商店街における外部招聘型チェンジ・エージェントによる「場」のマネジメント機能および「場」の進化・発展(自己組織化)の解明をさらに実施することである。商店街関係者よりその進化・発展についてさらなるヒアリング等を実施し、形成された「場」の進化・発展についてそのプロセスと将来について考察する。 第2に、全国の地方創生分野におけるチェンジ・エージェント導入事例の考察である。鹿児島県K町、宮崎県S町をはじめ福岡県N市等の事例を考察し、その導入プロセスや場の進化・発展について事例を検証し、比較分析を実施する。とくに鹿児島県K町の事例は、地方創生におけるチェンジ・エージェント導入がステークホルダーとの調整が難しいことを示す貴重な事例となることが予想される。そして他の自治体との比較分析を通じてチェンジ・エージェント導入の成否がどこにあるのか考察する。 第3に、チェンジ・エージェントおよび場の理論についての整理を行い、これらの理論的枠組みと地方創生のいくつかの現場の取り組みを接合させることを実施する。 これらの事例検証については、現地におけるヒアリングが不可欠である。しかし、新型コロナ感染症対策の観点から現地訪問について制約がかかる可能性があることが懸念される。十分な対策を講じるとともに研究スケジュールに影響が生じた場合には柔軟に対応できるよう配慮できるようにする。
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