2021 Fiscal Year Research-status Report
植民地統治と会計ー南洋群島における燐鉱事業管理に焦点を当ててー
Project/Area Number |
19K13874
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Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
角 裕太 広島経済大学, 経営学部, 助教 (00824351)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計 / 南洋拓殖 / 南洋興発 / 南洋庁 / 臨時南洋群島防備隊 / 原価管理 / 燐鉱・製糖事業 / 決算・決算報告 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,植民地・委任統治領と会計という共通テーマのもと,会計の役割・機能を明らかにすることを目的としている。その問題意識のもと,日本企業(南洋興発,南洋拓殖など)や公的組織(臨時南洋群島防備隊・南洋庁)に関わる予算・決算史料を中心に分析を進めた。 これまで,南洋群島における燐鉱事業に関しては,防備隊・南洋庁,南洋拓殖,南洋興発における実態を会計史料から把握できることが分かっていた。これに加えて,日本が統治を行う以前のドイツ統治時代における燐鉱事業に関する史料が発見された。そこでは,1908年から1913年にかけて,ドイツ企業が燐鉱事業をどのように展開していたのかについて,貸借対照表や損益計算書も含めながら把握することができる。これにより,ドイツ統治時代から日本統治時代にかけての燐鉱事業の展開について,連続的に理解することができると考えられる。 また,昨年度よりまとめていた2編の論文が出版された。1つは,南洋興発で実践されていた会計実践が,南洋群島における労働者,拓務省(担当省庁)との賃金交渉過程において労働状況をリアリティをもって描写するものとして,またその後の状況をモニターするツールとして役割を果たしていたことを示した。これにより,会計が統治の技術(Miller and Rose 1990, p. 8)として,南洋群島においても機能していたことを示唆できた。さらに,防備隊・南洋庁における予算実践の展開について,その特徴を考察した。防備隊と南洋庁の予算編成を比較した場合,防備隊の特異な予算編成が,制度的背景から大きな影響を受けていたことを明らかにした。とくに,南洋庁とは対照的に,防備隊の予算編成は非常に柔軟であり,そうした実践が南洋群島の基盤形成に寄与したことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果の一部を国際雑誌へ投稿,掲載することが出来たものの,国立公文書館に所蔵されている史料群について,予定通りに収集することが出来なかったことでやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
国立公文書館において所蔵されている南洋群島関係史料の収集を進めるとともに,これまで収集してきた史料をもとにまとめを進めていくことを考えている。とくに,燐鉱事業に関連する部分について,各時代・組織ごとの様相を明確にしていくことを目標とする。
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Causes of Carryover |
出張が行えなかったことや当該予算以外の資金を一部充当したことにより,予算に残額が生じた。当該予算は,史料収集のための旅費,学会発表のための出張旅費,論文投稿に関わる費用に充てることを予定している。
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