2019 Fiscal Year Research-status Report
地域共生社会における地域課題解決型から未来創造型への地域資源開発に関する研究
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19K13954
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
吉田 輝美 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (90517153)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域資源開発 / 地域共生社会づくり / 地域ケア会議 / 地域ケア会議の機能 / 地域課題 / 政策形成 / 自治体 / 社会福祉法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、介護サービスを終了した利用者が地域の中で自立した生活を営むために活用できる継続性、安定性を重視した地域資源を開発することである。そのため、地域ケア会議により共通認識された地域課題に対し、法人格を有する介護サービス事業所や社会福祉法人が、事業所による地域貢献活動という命題の具現化方法として、地域資源開発が位置づけられているかを明らかにすることである。また、厚生労働省が提起した施策を実現するために地域ケア会議によって発見された地域課題が、区市町村の政策形成へとつながっているかを検証し、政策形成機能レベルに到達する成否にかかわる要因を明らかにすることである。 令和元年度の研究実施計画は、全国自治体における地域ケア会議の実態把握と確認を行うことであった。そこで、1741自治体へアンケート調査を行った。この調査から、地域ケア会議の開催状況が自治体による違いがあるのか、違いがあるとすればその要因は何かを明らかにする。この点は現在分析中である。この分析が終了したら、地域ケア会議による地域課題解決状況について、アンケート調査で協力の意向を表明してくれた自治体でのインタビュー調査へつなげていく計画であり、令和2年度の実施を予定している。自治体へのインタビュー調査から、地域資源開発がうまく行われている特徴を導き出していく。また、反対に地域資源開発がうまく進まない要因についても、調査協力意向を示してくれた自治体から分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年の介護保険制度では、高齢者自身が介護予防に取り組むことを自治体が後押しし、要介護状態や要支援状態から脱却することによって介護サービスが終了するとされている。いわゆる介護サービスからの卒業と言われる状態をめざしている。これらが介護保険サービスからの切り離しで終わってしまえば、その後の機能改善状態が長期的に維持できなくなり、機能低下によって介護サービスの再利用者となることは充分予測がつく。そこで、地域にある介護保険サービス以外の地域資源につながって行かなければ、機能低下が再び起こるリスクが懸念される。しかし、現存の地域の資源だけでは個々のニーズを満たすには不十分な場合が多く、新たな地域内の資源開発に関し喫緊の課題となっている。これらの点から、地域ケア会議に着目して、自治体の特徴を把握することを目的とし調査を実施した。調査対象は、総務省の2019(令和元)年5月1日現在全国地方公共団体コードに基づき、1741自治体とした。現在この回答を分析している。この分析から、自治体が地域ケア会議によってどのような地域課題が把握されたか、地域ケア会議の機能はどのような状況となっているか、自治体が地域課題解決に向けてどのような対応を行っているかなどを明らかにする予定である。また、この分析結果から、自治体は具体的にどのような方法で解決への取り組みを行い、その過程で生起した課題などは何であったのか、課題解決後の状況において新たな課題は発生していないかなどを、インタビュー調査によって深く分析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年の自治体アンケート調査の分析結果から、地域ケア会議の実態把握し、地域ケア会議開催の状況から、地域ケア会議の5つの機能に沿って比較し、政策形成へと移行していかない要因を分析する。ここから、政策形成へと上手く移行してい行かない自治体のインタビュー調査を実施する。また、政策形成へと上手く移行していた自治体へインタビュー調査を実施し、両者の要因を分析する予定である。さらに、介護サービスからの卒業した利用者が機能維持するために、受け皿となる資源を地域の中に開発した方法についてインタビュー調査により分析する。 地域資源開発は、自治体のみの努力では解決できないことから、自治体内の社会福祉法人と協同することによって、新たに地域資源開発できた地域に関して情報収集する。その後、実際に社会福祉法人によって開発された地域資源について、その方法や運営課題等を社会福祉法人へのインタビュー調査から明らかにする予定である。 最終的には、法人格を有する介護サービス事業所による地域資源開発に関する共通性・汎用性の検討を行い、地域特性に配慮しながら新たな地域資源を創設できるように社会に還元していくことをめざしている。
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Causes of Carryover |
令和元年度の調査に関し、印刷委託費用を可能な限り自分で行い経費削減を図った。また、データ入力作業委託においても、合い見積もりにより業者選別を行い、経費削減に努めた。これらによって生じた次年度使用額は、インタビュー調査のための旅費、謝金へ充当させるとともに、インタビュー調査の文字化等への経費として活用する予定である。
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