2019 Fiscal Year Research-status Report
地方都市において展開可能な貧困対策に関する基礎研究:カナダの先進事例比較を通して
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19K13970
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
中村 直樹 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (30458210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貧困 / 貧困理解 / カナダ / 地方都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先進事例比較に基づいて、地方都市における「貧困実態」を踏まえた地域レベルで開発・展開できる貧困対策の導入可能性・有効性を検討する、という目的を達成するために、対象都市(カナダ・ハリファックス市)における地域レベルで開発・展開されている貧困対策の各プロジェクトの調査をおこなう。そこで得られた知見を基に、パイロットプロジェクトとして実際に函館市においてカスタマイズした貧困対策のプロジェクトを実践し、その実践効果をフィードバックし、随時改良を重ねて、最終的に「日本の地方都市での貧困対策への応用可能性」を示すことを達成するものである。 2019年度の主な成果としては、ハリファックス市のUNITED WAY HALIFAXで開発・展開されている貧困対策の各プロジェクトを明らかにし、その内のPoverty Solutions Discussionをパイロットプロジェクトとして函館市内の学生を対象に試行したことである。その成果として、①「貧困の理解」:貧困ではない人々の間には、明確な貧困に関する知識の欠如があった。したがって、貧困層の人々が直面している困難を真に理解する機会を設けることが重要であり、それによって私たちを解決策に近づけることができることが示唆された。②「コミュニティベースのサポート」:貧困には様々な要因があるが、今回、貧困の一因となる要因は、コミュニティレベルでの貧困対策の実施の欠如であることが示唆された。したがって、貧困層の人々に対する地域に根ざした支援を築く必要があり、そのためには、貧困の理解を通じて地域住民の交流や協力を促進することが重要である。 なお、以上の成果と同時に、この成果を導いたPoverty Solutions Discussionの導入可能性・有効性が示唆されたことで、本研究の計画の妥当性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、ハリファックスの貧困問題に関する理解のために、カナダ統計局の国勢調査データなど広く用いられているデータ類の他、非営利組織による貧困に関する自主的調査やカナダの学術雑誌に掲載された論文のレビューをおこなった。次に、ハリファックスの地域レベルで開発・展開されている貧困対策に関して、UNITED WAY HALIFAX(2018)によってレポートされている「Focus Areas for Change & Ideas for Action Report (コミュニティによって開発された貧困削減のための129のアイデア・アクション)」のレビューをおこない、その内のPoverty Solutions Discussionをパイロットプロジェクトとして函館市内の学生を対象に試行した。なお、その成果は「A Practice about Building Poverty Solutions in Hokkaido, Japan」として25th Asia-Pacific Joint Regional Social Work Conferenceにおいて発表した。 当初予期していなかったこととして、「Focus Areas for Change & Ideas for Action Report (コミュニティによって開発された貧困削減のための129のアイデア・アクション)」に紹介されている主要な非営利組織やボランティア・グループの現地調査を2020年3月に計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により現地調査計画を中止し、2020年度以降に延期せざるを得ない状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度に新型コロナウイルス感染拡大の影響により計画延期となっていた「Focus Areas for Change & Ideas for Action Report (コミュニティによって開発された貧困削減のための129のアイデア・アクション)」に紹介されている主要な非営利組織やボランティア・グループの現地調査をおこなう。また、ハリファックスにおいて、貧困対策に市民を巻き込み、市民を基盤とし、地域社会の変化を生み出す方策を検討するために、それを活動方針に掲げるUNITED WAY HALIFAXから聞き取り調査をおこない、地域レベルでの貧困対策の開発・展開を可能とするためのソリューションやプロジェクトなどの知見を得る。次に、そこで得られた知見を基に、実際に函館市において市民を対象に実践するためのパイロットプロジェクトの骨子を作る。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、海外現地調査を伴う本研究は、直接・間接的に、また長期的に影響を受けることが懸念される。研究の遂行のために、刻々と変化する状況下において、柔軟な発想と臨機応変な対応をおこない、海外現地調査の代替案としてWeb・電話会議による調査の検討をおこなう等、研究の推進方策を常に図っていく。
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Causes of Carryover |
当初予期していなかったこととして、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2019年度中に計画していた現地調査が中止となったため次年度使用が生じた。中止となった現地調査計画は2020年度以降に延期し実施する予定である。なお、2020年度以降も新型コロナウイルス感染拡大の影響が継続する場合は、現地調査の代替案としてWeb・電話会議による調査を計画し、そのための環境を整えるために使用する。
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