2019 Fiscal Year Research-status Report
Inclusive Lending System: Empirical and Normative Research Based on Financial Capability Theory
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19K13995
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
角崎 洋平 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (10706675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金融包摂 / 柔軟な債権管理 / 信用生協 / 家庭経済ソーシャルワーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に以下の2点について調査研究を進めることができた。 第1に、包摂的な金融実践を展開してきた岩手県の消費者信用生活協同組合(信用生協)の設立から現在までの取り組み、その後の各地への派生過程について調査した。調査のなかで、信用生協設立当初より、市中銀行だけでなく労働金庫からの借り入れも困難だった未組織労働者や中小労働組合・合同労組の組合員の金融包摂を意図していたことを確認した。また信用生協や信用生協をモデルとした貸付事業に特徴的にみられる柔軟な債権管理手法についても、原点を確認することができた。信用生協が多重債務者支援に重点を置くようになる以前から、比較的債権管理は柔軟に実施されており、こうした実践にもかかわらず経営を持続させることができたことが、その後の信用生協の実践の基盤になっていることが確認された。 第2に、フランスの家庭経済ソーシャルワーカーのダリア・メシャエブ氏とリーン・マリアル氏をJSPS18K02178(代表・佐藤順子)と共同で招聘し、家計相談支援に従事する相談員育成の在り方とともに、金融包摂のための専門職の役割について考えるシンポジウムを開催した。家計改善支援事業や福祉貸付事業に従事する関係者も参加し、情報交換もすることができた。このなかで、家庭経済ソーシャルワーカーの実践は、金融面での支援と福祉給付面での支援を一体的に行うものであることを確認した。また加重債務や延滞金の解消のために日本における家計改善支援事業と比して長期の伴走的支援を展開していることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目以降に本格的な調査を進めるにあたって、主要調査対象である信用生協の現状と沿革について詳しく確認することができた。今後信用生協の業務記録を確認したり、債務者アンケートを実施したりする際の重要な知見をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初今年度は、信用生協の債務者に対するアンケート調査や、信用生協の債権管理記録についての調査を中心に進める予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で出張調査が困難になっており、信用生協自身も低所得者への金融支援多忙となっている。出張を伴う調査研究は今年度後半から翌年度以降に後ろ倒しし、今年度はコロナウィルス感染症拡大に伴う低所得者への金融実践についての情報収集や、最終年度に集中的に進める予定であった金融ケイパビリティ理論についての文献研究を中心に進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定より物品費(書籍)の購入が少なかった。翌年度は文献研究が中心になる予定であり、文献購入のための物品費として使用する。
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