2020 Fiscal Year Research-status Report
Inclusive Lending System: Empirical and Normative Research Based on Financial Capability Theory
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19K13995
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
角崎 洋平 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (10706675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金融ウェルビーイング / 金融排除 / 特例貸付 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で当初の研究計画の一部変更を余儀なくされたが、当初計画後半に予定していた理論研究を前倒しにて行った。また、コロナ禍で実施された生活福祉資金の特例貸付についての調査を進めることができた。 前者については、金融ケイパビリティや金融ウェルビーイングに貢献する貸付制度の機能と存在意義を、給付制度との対比から明らかにする論文を発表した。そこでは、給付方式を個人間資源移転、貸付方式を個人内資源移転として整理し、社会正義論の観点から、前者(給付)は個人間の不平等や生活保障の不十分さを是正するものであること、一方後者(貸付)は個人の自由な判断に基づく適時的な資源移転を実施し、人が自由な人生を送ることを可能にするためのものであることを確認した。以上を踏まえて、コロナ禍で展開された特例貸付についてその意義を検討し、償還免除の在り方や給付制度との相互補完の重要性についても指摘した。 後者については、特例貸付についての通知や経緯を整理しつつ、特例貸付を実施している社会福祉協議会にインタビュー調査も実施し、この制度の機能や問題点について論文で発表した。そこでは今回の特例貸付の特徴として以下の点を指摘した。すなわち、住民税非課税世帯に対する償還免除制度、生福貸付の委託先拡大、郵送での申込受付、そして全国レベルでのスクリーニングの不徹底、である。これにより生福貸付の特例貸付は、数多くの世帯にとってアクセスしやすい、「間口が広い」制度となった。しかし、その反面、本来は給付等のその他の支援が必要な層にも貸付することで、必要な生活困窮者支援が実施できていないという問題が生じていることも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で当初予定していた大規模なインタビュー調査やアンケート調査は実施できなかったが、そのかわり理論研究の進捗を進めることができた。また当初は生協系の貸付事業を中心に進める計画であったが、この間の生活困窮者向け貸付事業の展開を踏まえ、研究対象を今年度は生活福祉資金貸付に変えることにより、調査研究もある程度は進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も当初予定していた生協系貸付事業の借受世帯へのアンケートやインタビュー調査は進めることが難しいように思われる。ただし、翌年度以降調査を行うために、コロナ禍でのこうした貸付事業の動向について調査を進めておきたい。また昨年度から引き続き、生活福祉資金貸付の特例貸付も研究対象に含めることで、研究を遅滞なく進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で、出張やアンケート調査・インタビュー調査が、実施できなかったため、次年度以降に使用することとなったもの。コロナの影響が緩和されれば、当初の計画に沿って使用する。
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