2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical study on system-approach for district-based continuous school improvement in the U. S.
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19K14055
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
照屋 翔大 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (90595737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | システム・アプローチ / 持続的な学校改善 / 地方学区 / 校長指導職 / リーダーシップ / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「持続的な学校改善」を実現させる諸要件について、アメリカにおける地方学区を基盤とした学校改善の理論研究と実践の分析を通じて明らかにすることである。これは、個別学校単位ではなく、システム・アプローチの視座から学校改善を駆動させる要因を明らかにする試みである。 初年度にあたる今年度は、①学区の効果性や学区に期待されている現代的役割の究明をテーマにした研究論文の収集・レビュー、②全米レベルでのシステム・アプローチを採用する教育政策の展開状況の把握、③フロリダ州・ブロワード郡学区での事例調査に取り組んだ。これらの検討を通して、①学校改善に向けた今日的な研究的かつ実践的関心に、学区に置かれる「校長指導職(principal supervisor、以下PSとする)」への期待があること、②当該職に期待される業務が校長の監督者から支援者へとシフトしていることについて、その具体的な職務内容と合わせて明らかにすることができた。また、以前に実施した調査の結果と比較すると、その配置や任用の在り方などが、学区の特性等に応じて異なっている可能性が高いことが明らかになった。 以上の成果を踏まえ次年度は、以下の研究に取り組みながら、テーマの解明に迫る。①今年度に引き続き、PSの職務内容やその実態、専門職基準等に関する全米レベルでの動向について確認・分析を進める、②これまでの研究が都市部を事例にしている傾向が見られるため、地方部(rural area)での実践に着目し調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主に次の二つの観点・手法により研究を進めた。第1は学校改善における地方学区事務局の役割やそのリーダーシップの在り方についての文献調査(上述の①②)、第2は学区事務局による学校改善支援の具体的な戦略についての実地調査(上述の③)である。 前者については、主に、学術誌における学区の役割論のレビューの他、学区リーダーの養成やその職の在り方を規定した各種基準(例えば、教育リーダーの養成に関わる基準(National Educational Leadership Preparation(NELP) Standards))の探索・分析にあたった。ここでは、学区システム全体を視野に含んだ学校改善の思想がどのように基準化されたのかについて検討したが、文献調査を進めるなかで、PS(校長指導職、principal supervisor)が学区が期待される役割を発揮する上で重要な位置づけにあることが分かってきた。 後者については、PSの職務実態や役割期待の具体について明らかにするために、フロリダ州ブロワード郡学区を訪問し調査を実施した。学区のディレクターや校長らへのインタビュー調査によって、校長指導職の任用や教育行政上の位置づけ、校長から見た効果および当該職への期待等についてデータの収集を行った。現在も分析を進めている最中だが、興味深いことは、フロリダでのPSのあり様あるいは役割期待が、以前に同様の意図で調査を実施したシアトル市で得られたデータとは違いがみられた点である。これは、州や学区等、学校を取り巻く種々の制度的・政策的環境等に応じて、PSの職のあり様が異なる可能性を示唆していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、PSは学校と学区(行政)をつなぐ役割を果たす存在として、本研究が着目するシステム・アプローチに基づく学校改善を促進するうえで重要な機能を果たしていると想定される。そこで来年度以降も、PSに関する情報収集を中心に研究を進めていくが、来年度については主に以下の課題に取り組む計画である。 ①全米各地でのPSの任用条件等、職を規定する制度的要件の整理、②PSの専門職基準(Model Principal Supervisor Professional Standards 2015)の内容分析、③大都市学区を中心に実施されたPSの効果等について実証研究のレビュー、④地方部(rural area)での質的調査の実施。 渡航を伴う調査が難しくなる可能性もあるため、事例調査対象とは、オンラインでのインタビュー調査の活用も視野に入れるなど、柔軟性を持ちながらも、確実な研究の進捗に努める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、次年度の渡航費用に加算するため、計画的かつ効率的に研究経費を執行したことによる。 今年度の研究を通じて、本研究では、できるだけ地域特性の異なる学区・学校を複数訪問し調査する必要があると考えるようになった。そのため、当初予定していたよりも、渡航回数を増やし調査を実施する必要が生じたため、その渡航費として活用する。 もし、渡航が難しくなった場合は、オンラインでの調査実施を視野に含んでいるので、そのための準備費用に充てたいと考えている。
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Remarks |
照屋翔大(2020)「アメリカ教育行政・経営大学協議会(UCEA)における校長の養成・研修をめぐる動向」『日本教育経営学会学会ニュース(2019年度第2号)』10頁。
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