2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical study on system-approach for district-based continuous school improvement in the U. S.
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19K14055
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
照屋 翔大 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (90595737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | システム・アプローチ / 持続的な学校改善 / 地方学区 / 校長指導職 / 校長 / リーダーシップ / 仕事に埋め込まれた支援 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「持続的な学校改善」を実現する諸要件について、アメリカにおける地方学区を基盤とした学校改善の理論と実践事例の分析から明らかにすることである。 今年度も引き続き、各地方学区において配置が進められている「校長指導職(principal supervisor、以下PS)」に関する役割期待・役割実態の解明を主に研究を進めてきた。今般の状況から現地への渡航が制限されているため、文献資料ならびに感染症拡大前に収集したインタビューデータを分析材料とした。 これらの分析を通して、PSの役割が校長の力量形成、とりわけ校長職任用後の力量形成への貢献が期待されていることが明らかになった。そこで当初の計画にはなかったが、全米での校長職任用制度の分析を行い、PSによる支援が校長の力量形成においてどのような位置づけにあるのかの探索を行った。 以上の取り組みから明らかになった点は次の通りである。①校長指導職を基礎づける働きとして、メンタリングやコーチングといった校長の日常的な実践、とりわけ授業改善を促すリーダーシップ実践(instructional leadership)への直接な支援が期待されていること、②校長職任用後の制度的な力量形成機会は限られており、PSによる「仕事に埋め込まれた支援(job-embedded support)」が上記の校長によるリーダーシップ実践において重要であること、③PSによる支援の実際と校長が求める支援のニーズにはギャップが確認され、PSの力量形成や任用の在り方が課題になっていること。 本研究の関心であるシステム・アプローチの視座からは、地方学区と学校の中間層(middle tier)としてPSが機能することの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
渡航禁止の状況下において可能なかぎり課題解明に向けた研究の進捗は図ってきた。しかし、調査研究をテーマに冠した本研究としては、遅れていると判断せざるを得ない。具体的には次のような進捗にある。 今年度は、ワシントン大学が中心となって開発を進めてきた校長指導職(principal supervisor、以下PS)の専門職基準「Principal Supervisor Performance Standards ver1.0~3.0」について現地での聞き取り調査を基に分析を進める予定であった。しかし、感染症の状況から渡航制限があり、調査を実施することができなかった。そのため、同スタンダードについては文献上の分析に留まり、他の専門職基準(例えば、全米州教育長協議会(CCSSO)による基準等)との異同について検討するに留まった。 文献研究に注力する中で、PSの役割解明には、校長の力量形成とりわけ校長職任用後の力量形成機会との関連が強いことが明らかになった。そのため、当初計画にはなかったが、全米各州における校長任用制度について整理した。その中で、校長職任用後は、制度的な研修の機会が少ないことが明らかとなった。また、文献およびインタビュー調査データの精査から、日常の業務との関連性が見えるかたちでの支援ニーズが高いこと、しかしそれに応えうるPSの配置が難しい状況にあることも分かってきた。 以上の研究成果は、アメリカにおいてシステム・アプローチの観点からの学校改善を駆動させていく上でPSが発揮する役割の大きさとともに、その任用と力量をめぐる実務上の課題を抱えていることを示唆する。 この点は、日本における教育委員会事務局(指導主事)と学校(校長)との関係、あるいは校長の力量形成とも通底する課題であるように考察する。次年度の検討課題につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度に当たるため、本研究の総括を行う必要がある。ただし、本研究の中心をなす現地調査はほとんど当初の計画通りには実施できていない。感染状況を見ながらにはなるが、様々な制限が緩和・撤廃されたところから順次調査ができるよう準備を進めていく。 調査対象としては、上述のワシントン大学の研究室(District Leadership Design Lab(DL2))の他、校長指導職(principal supervisor、以下PS)に関する全米調査を主導してきたヴァンダ―ビルド大学を候補に準備を進める。当該調査校において、本研究テーマに関する理論と全米での取り組み状況について追加的な確認をする。 学区調査としては、2020年に訪問したフロリダ州ブロワード郡学区において追加調査を実施する。前回の調査において、PSの専門職基準の策定および力量形成プログラムの開発に乗り出すことを確認した。その後の進捗を調査しながら、システム・アプローチによる学校改善におけるPSの役割について明らかにする。加えて、先行研究から都市部と地方部ではPSの機能が異なることが示唆されている。本研究ではすでに、シアトル市やブロワード郡学区など比較的規模の大きな学区において調査を実施してきた。上記研究機関でのヒアリングで情報を得ながら、地方部でのPSの実態解明も試みる。 また、現地調査に加えて、UCEAやAERAといった関連学会に参加し、最新の研究知見を踏まえながら、研究全体の総括を行うこととする。 なお、本研究の成果は、日本教育経営学会や日本教育行政学会といった全国学会等での口頭発表や原稿化を通じて、広く公開に努める。
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Causes of Carryover |
2020年3月以降、当初計画をしていた渡航調査が一切実施できていないことが理由である。渡航制限の先行きが不透明であることを踏まえ、ケーススタディを集録した文献の収集・分析の割合を高め、できる限り実践の関する情報収集に努める。また、オンラインでのインタビュー調査実施の方策についても探り、可能な限り実施する。
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