2022 Fiscal Year Research-status Report
Empirical study on system-approach for district-based continuous school improvement in the U. S.
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19K14055
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
照屋 翔大 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (90595737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 校長指導職 / 校長 / リーダーシップ / 学校改善 / システム・アプローチ / 地方学区 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカにおける初等中等教育の実質的基礎単位である学区(district)に着目し、システム・アプローチの視座から「持続的な学校改善」を実現させる諸要件を明らかにすることを目的とする。 昨年度までの成果に基づき本年度は、校長指導職(Principal Supervisor:PS)の配置と資格要件等の制度的側面について、先行研究および各種のウェブ情報を基に整理を行った。当初は現地への渡航を予定していたが、渡航制限が継続されたために、現地調査を実施することができなかった。今年度の検討で得られた主要な知見は以下のとおりである。 (1)各州の免許・資格に関する法規について整理・分析を行った。PSの任用や配置に関する州教育省の関与について検討する中で、任用のための基礎要件とともに、連邦教育法(ESSA)の活用計画について各州間に違いがあることを明らかにした。 (2)PSの現代的役割は校長に対するコーチング、データに基づいた校長評価とその結果を踏まえた支援にある。これらの実践を支えるPSの力量形成機会として、州教育省が主体となった支援体制、大学が提供する養成や研修のプログラム、専門職団体によるプログラムなど、複数の機会が整備されていることが分かった。各プログラムの内容面における相違を明らかにすることが次年度の課題となる。 (3)パンデミック以降、教員のみならず校長の職務ストレスの高さとそれを理由とした離職が課題となっている。その解決策としてPSが重要な役割を果たしうるという研究的および実践的動向を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も当初予定していた現地での聞き取り調査等を実施することができなかったことは達成状況の評価に大きく影響している。次善策として、今年度は、訪問を予定していたワシントン大学による取組の理論的・実践的支柱になっている研究者の著書等によって関連情報を整理した。また並行して、他の同様の取組について情報収集を行った。その結果、学区教育長らを主たる構成員とする「アメリカ学校管理職協会(AASA)」が同大学とパートナーシップ関係を結び、PSのためのAcademyを開設していることが分かった。また他の主体による類似の取組がニューヨーク市において展開し、全米各都市とネットワークを形成していることを確認した。 今年度の課題としていたPSの配置や力量形成機会等をめぐる状況の解明については、関連する州法の内容を一覧化しながら、各州の状況について検討を進めた。その中で、連邦法である初等中等教育法(ESSA)の活用に関する州計画においてPSに関連する内容を含む州を抽出することができた。これまで訪問した2州とは異なる制度的環境にあることが予想されるため、次年度の訪問調査対象として位置づけ、PSをめぐる制度・運用実態の全米的状況の解明につなげたい。 また先行する学術研究および事例報告等を整理する中で、PSを校長に対する支援だけでなく、離職を防ぐための戦略として活用している例も確認された。これは、PSの役割が従来の学区や州の施策や法規に校長を従わせるという役割から、コーチングや校長評価を通じて校長の教授的リーダーとしての成長を促すという役割に変化したという役割変容とは異なる側面を提起している。校長とPSとの関係性についてより詳細な調査・分析と、学区がどのような役割期待を持ってPSの配置および校長らとのチーミングを行っているかについて明らかにする必要性を認識するに至った。これは次年度に向けた研究課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで訪問できていなかった調査対象に加えて、この間の検討を通じて確認することができた事例について計画的に訪問調査を実施する。調査日程に合わせて、本研究のテーマに関連する学会の年次大会(UCEA、AASA、ICPEL等)に参加し、研究知見の収集にあたる。そのうえで、本研究の総括として、システム・アプローチの視座に立ち、PSをアメリカにおける現代的な学区論として整理し考察することを次年度の課題とする。 PSの力量形成をめぐる動向にかかわっては、昨年度に引き続き、上述のワシントン大学の他、ニューヨーク市のLeadership Academyと同Academyが提供する研修プログラムを活用している州(たとえば、コロラド州)を調査候補に加え、準備を進める。 PSは学区における取組ではあるものの、その活用や配置において州教育省による予算措置や支援体制が果たす役割が大きいことも分かってきた。PSに対する支援体制が確認されている州として、コロラド州、ミネソタ州、テキサス州などがある。これらの州は、PSの活用においてESSAによる財源を活用している州でもある。持続的な学校改善をシステムという観点から検討しようとする本研究の目的に照らせば、連邦―州―学区―学校を一つながりのシステムとしてトータルに検討することができるこれらの州において調査を進めることは大きな意味がある。すでに調査経験のある州も含まれるため、既存の人的ネットワークも活用しながら、調査を実施する。 訪問調査においては、PSの役割遂行の実態把握のために学区・学校調査を実施する。2020年に訪問したフロリダ州ブロワード郡学区での追加調査に加えて、上記各州での聞き取り調査も計画する。本研究ではこれまで比較的規模の大きな学区において調査を実施してきた。比較検討のため、地方部での調査対象を選定する。
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Causes of Carryover |
2020年3月以降の継続的な渡航制限のために、現地調査が一切実施できていないことが理由である。計画していた事例すべてを訪問したいが、航空運賃が従前よりも著しく高騰しており、現状に即した再計画が必要になることも想定されうる。効率的・効果的な渡航計画を立案し、研究目的を達成できるよう調査研究を遂行する。
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