2019 Fiscal Year Research-status Report
高校教育普及期における准看護婦制度の改革及び存続メカニズムに関する研究
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19K14067
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
濱沖 敢太郎 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (80803725)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育 / ジェンダー / 准看護婦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、准看護婦の養成及び身分保障を支えてきた社会経済的メカニズムと、1960~1970年代におけるその変容を、若年女性の職業選択と教育訓練との関係の観点から明らかにすることである。特に、医療・看護制度全体の改革における准看護婦の位置づけと、高校進学率の上昇が女性の職業選択にもたらした影響という、これまで着目されてこなかった2つの問題に焦点を当てた分析が特徴である。2019年度は主に2つの課題に取り組んだ。 1、1950年代から1970年代における、日本看護協会の運動史にかんする研究を進めた。特に、同協会が厚生省や日本医師会、関連審議会に対して行った陳情や意見提出にかんする文書の整理に重点的に取り組んだ。その結果、准看護婦制度の廃止を強く主張してきたと理解されている同協会の運動方針にも、時期によって廃止をめぐる主張にも多様性が存在することが明らかになった。同協会の方針は、教育環境の改善にもとづく看護職の地位向上という点では一貫していたが、准看護婦と正看護婦との待遇差や業務区分の問題については、必ずしも明確な解決策を見出せていなかったと考えられる。 2、1950年代から1970年代における、医療従事者による労働組合の運動史にかんする研究を進めた。特に、日本の労働運動全体における医療系組合の特徴の理解と、職能団体である日本看護協会の運動方針との異同の理解に努めた。その結果、看護職の地位向上については日本看護協会と同様、医療系労働組合の多くが待遇改善と合わせて要求してきたのに対して、特に看護補助職の量的確保や待遇の問題をめぐって両者が対立したことが明らかになった。このような対立が、准看護婦をめぐる諸団体の利害調整を困難にしたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本看護協会が1950年代から1970年代にかけて准看護婦制度にかんして発行してきた文書群について、その作成経緯や文書ごとの特徴を整理することができた。特に、特定の文書については協会内部での論争点が明瞭になったことにより、次年度以降、都道府県レベルでの看護動向にかんする調査がより効率的に実施できるものと考えられる。 その一方で、上記資料整理に当初予定していたよりも時間を費やすこととなり、中央団体、特に厚生省や日本医師会の政策・運動方針にかんする文書収集は十分に進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
特に2020年度前半は感染症対策などの都合により、関連団体への訪問調査が実施困難な状況が想定される。このため、当初予定していた高等学校衛生看護科および技能連携制度にかんする調査や、厚生省や日本医師会の文書収集といった作業は、複写物の取り寄せを中心に実施する。この作業を踏まえて、2020年度後半以降、日本看護協会の方針をめぐる組織内部の見解の相違にかんする資料収集を訪問調査などによって実施する。
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