2021 Fiscal Year Research-status Report
教育実践における自律性と科学性の関係に関する教育思想史的研究
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19K14079
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Research Institution | Osaka Aoyama University |
Principal Investigator |
田岡 昌大 大阪青山大学, 健康科学部, 講師(移行) (90804758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 城戸幡太郎 / 教育科学 / 戦後教育学 / ヒューマニズム / 教育実践 / 生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度より引き続いて城戸幡太郎の教育思想研究を中心としながら、研究に取り組んだ。また、城戸の教育思想の理論的な有効性について、道徳科との関係から検討することによって検討を行った。 城戸幡太郎の教育思想研究としては、城戸の著作の講読を継続的に行った。これまでの研究では、戦後期の城戸は、自身の教育科学論を展開する際に「ヒューマニズム」を「イデー」として位置付けている点を明らかにしてきた。また、その際に「生活」が重要な概念であることも明らかにしてきた。今年度は、特にこの「生活」の概念に着目しながら、城戸の教育科学論、教育実践論について検討を行った。 また、これに関連して、城戸の「生活道徳」に関する検討を行った。これは昨年度掲げていた、本研究課題を現代的な問題として引き取るための論点の一つである。戦後初期に城戸は「生活道徳」という議論を展開している。ここで想定されている「生活」は、具体的には戦後初期のものであるため、歴史的な文脈に根差している。しかしながら、「生活するものを科学するものの主体」として位置づける点において、また、その「生活問題の解決」を「道徳の問題」としている点は、城戸の思想の一つの具体でもあると考えられる。そこで、この概念が、時代を超えていかに有効性を持っているかについて、今日の道徳教育論と関わらせて検討を行ってきた。 しかしながら、こうした成果については2021年度中に発表することが叶わなかった。前者の課題については、より広い学説史を参照しながらの検討が求められるが、十分に行えていない。後者については、検討を一定深めることはできたものの、その成果をまとめることはできていない。 これらについては、次年度に継続して取り組んでいく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、昨年度までの研究成果を踏まえ、それを足場として、より広い射程で検討を進める予定であった。 しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、当初の想定よりも研究時間の確保が難しくなった。特に、勤務先での授業に大幅に見直しが必要となったことが大きな影響であった。また、これに加えて、勤務先での業務量の変化なども重なった。その結果、研究に避ける時間が想定よりも大幅に減った。 また、自身の体調が不良となり、研究に時間を割くことができない期間も生じた。これによって研究をまとめ、論文を執筆するなどの時間を持つことが叶わなかった。その他にも、他大学の所属研究者との研究交流についても、想定した通りに時間を取ることができなかった。 こうした要因から、研究の進捗は想定よりも遅れて今に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、城戸幡太郎の思想研究については、継続的に進めていく。特に城戸の思想において心理学と教育学がいかに結びつけられたのか、また、それが戦後期の思想といかに連続性を持っているのかについて、より検討を進めていく。また、そのためには、より広い学説史との関係から検討を行う必要があるため、その検討も進めていく。 また、「生活道徳」に関する論考については、一定のまとまった成果が認められるため、順次発表を行っていく。また、それを足掛かりにしながら、より検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響から、業務量が想定と変わり、研究に割ける時間が十分ではなかった。具体的には、昨年度に続いてオンライン授業への対応が生じて、授業に関する業務が研究の時間を大きく圧迫した。また、出張などもできず、資料収集や研究上必要な議論も十分に行うことができなかった。 2022年度は、主に資料の取り寄せなどの点で費用を必要とする予定である。
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