2022 Fiscal Year Annual Research Report
教育実践における自律性と科学性の関係に関する教育思想史的研究
Project/Area Number |
19K14079
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Research Institution | Osaka Aoyama University |
Principal Investigator |
田岡 昌大 大阪青山大学, 健康科学部, 准教授 (90804758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 城戸幡太郎 / 教育科学 / 生活 / ヒューマニズム / 生活道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、城戸幡太郎の教育思想研究を中心としつつ、検討の範囲と文脈を拡げて研究に取り組んだ。また、関連する資料の収集を行った。その成果は、主に次の2点である。(1)特に「生活道徳」(城戸1946)という戦後初期の概念に着目し、その含意と現代的意義を明らかにした。ここでは「生活問題の解決」が主たる課題として捉えられており、そのために「生活するものを科学するものの主体として認める」という「生活科学」が要請される。ここに科学に対する主体性が位置付けられることが明らかにされた。(2)特に晩年の城戸の教育課程論を参照しながら、教師の自主性と教育実践の自律性の関係を検討した。城戸においては、「生活」との関係の中で教師の自主性と教育実践の自律性を把握する点で特徴があったこと、また、こうした把握が教育心理学を始めとした教育の科学との緊張の中で成立していたものであったことが明らかにされた。なお、以上の成果の一部は、いずれも学会での口頭発表として発表した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、大きく2点である。(1)従来あまり着目されていなかった戦後期の城戸幡太郎の教育思想の一端を明らかにしたことである。具体的には、「ヒューマニズム」を入口としながら、「立場」「生活」といった諸概念の布置を明らかにし、教育の実践性との関係を明らかにした。(2)城戸の思想と当時の教育心理学との関係の検討を通じて、教育の科学性に対する教育実践の自律性の条件の一端を明らかにしたことである。特に「生活」と「立場」が実践の自律性を構成するものとして重要な概念であることが明らかにされた。
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