2023 Fiscal Year Research-status Report
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19K14131
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
牧野 智和 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (00508244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 学校建築 / 図書館建築 / アクターネットワーク理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでの研究の一般的な公表と、応用的な展開を行った。一般的な公表としては、日本建築学会主催のシンポジウム「建築夜楽校2023 学校建築にこれからの教育は担えるか」に登壇し、社会学の立場からの研究を建築を専門とする方々にフィードバックするとともに、学校建築研究のなかでのキーパーソンであった設計事務所シーラカンスの赤松佳珠子氏に申請者の研究内容の妥当性を確かめ、また今後の学校建築のあるべき姿について議論することができた。また、赤松氏の紹介によって、一般的にはアクセスが難しいいくつかの学校建築の見学をさせていただくことができ、これまでの研究の知見をさらに深める手がかりを得ることができた。応用的な展開としては、学校建築の傾向にも一部関連するところがある図書館建築とその運営について、前年度の対談イベントの内容をさらに発展させて論文「アクターネットワークとしての図書館」を『ライブラリー・リソース・ガイド』第46号特集「図書館を創るとはどういうことか[中編]-多元的な創造へ」に寄稿した。その概要は、図書館は公共空間・公共建築の一種として、その近年のトレンドである相互触発・公共性醸成をその空間機能として積み込むようになっているが、より明確に市民性の醸成を企図して設置されてきた経緯があることを確認したうえで、民間企業を指定管理者とした図書館運営がいかに市民性醸成の機能を損なっているかを論じ、そのうえで民間企業による運営がもたらした新たな可能性を取り入れたうえでどのような図書館独自の機能の発展を見込むことができるのか、理論的な整理を行ったというものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初4か年であった研究期間のうち、4年目の前半で研究成果をまとめて単著として刊行することができたため。ただ、コロナ禍のために実際の建築空間を見学できなかったことがいくつかあったため、研究期間を1年延長してそれらの見学を行った。ただ、計画していた建築物をすべて見学することができなかったため、もう1年延長して計画を完遂したい。
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Strategy for Future Research Activity |
日本建築学会主催のシンポジウムをきっかけにして、いくつか見学させていただいた学校建築について、有名建築家による先進的な建築であったにもかかわらず当時はほぼ無視されたという特異な事例が見出された。なぜこのような事態が起こったのかを考えるにあたっては、建築物それ自体の価値を考えるのではなく、建築物の価値を評価する社会的コンテクストを分析することが有用だと考えられる。最終年度は、学校建築研究の応用として、この事例の考察を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大によって、建築物のフィールドワークの計画がやむなく中止となり、2023年度はそれらを可能な限り見学してきたものの、すべてを回りきることができなかったため。
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