2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス在住の日本人家庭における乳幼児親子の子育て支援に関するモデル研究
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19K14157
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
田尻 由起 東洋大学, ライフデザイン学部, 助教 (90802249)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子育て支援 / 家庭支援 / 乳幼児親子 / 在留邦人 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外在留邦人数は増加の一途をたどり、令和元年の在留邦人は140万人に迫る。それに伴い海外に在留する子どもたちも増加傾向にある。一般社団法人日本在外企業協会によると、家族帯同者数の年代別構成では 30 代と 40 代の子育て世代が全体の約 8 割を占めている。また帯同海外子女も乳幼児の子どもたちが約 45%と、乳幼児の海外帯同が急増している。しかしながら在外日本人家庭の子育ての現状や支援のためのニーズすら掴めておらず、また海外に住んでいることで、日本からの支援は行き届いていないのが現状である。 そこで本研究の目的は、パリ近郊に住む日本人家庭の乳幼児子育てを中心に、①:現地および日系の子育て家庭の利用し得る現地システム、施設、支援活動等を調査し把握すること、②:より充実した、また具体的な乳幼児親子への子育て支援を実施するための、子育て支援ニーズについて明らかにすること、③:①②より、パリ近郊地域の日本人家庭の子育ての全体像を把握すること、④:①から③を検討することで、子育て支援拠点となりうる日系託児所や幼稚園などに提供できる支援パッケージを試作する、⑤:パリ同様、西ヨーロッパ地域の在外日本人家庭の多く住む地域への応用可能な支援パッケージについて検討することである。 今年度は主に①、②を実施した。特にパリに住む日本人家庭の乳幼児親子の子育てについて実態を把握するために、子育ての支援の受け手である保護者、および日系の支援提供者(専門家)へのインタビューを行い、パリに住む日本人家庭の多様な子育ての実態の把握を行った。日本人家庭の乳幼児の保護者(日本人)は、異国での子育てについては様々な不安や不満、不便さを抱えながらも、概ね肯定的に捉えていることが示された。また支援者からは、個々人(団体)で動いているのが現状であるため、支援者同士がつながれるシステム構築の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的は2点あり、1)「現地における実態把握 パリ近郊に住む日本人家庭の子育てに関する、利用可能な現地及び日系システム(母子保健事業、子育て支援事業 、保育ママ制度等)や施設(現地または日系の保育所及び一時託児所等)、支援活動(子育てサークル、講演会、障害児支援グループ等)の全体像及び支援状況を把握するために現地にて調査する」では日系の支援者や支援施設や団体、システムについての調査は概ね終了したが、フランス(パリ)の現地の支援者や支援施設や団体、システムについては一部未実施である。 2)「子育て支援ニーズに関するアンケート調査の予備調査及び国内外の文献研究、子育て支援ニーズに関する調査についてはパリ近郊に住む日本人家庭に大規模調査(2人から300人程度)を予定しているため、その予備調査として質問紙作成のための個別インタビュー調査等を実施する。また他国における在外日本人家庭の乳幼児子育てに関する多様な 種類の研究を概観し、支援パッケージ作成のための準備を行う」については、おおむね順調に調査が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、昨年度未実施であった、フランス(パリ)の現地支援者や支援施設、団体、社会システム等の調査を行う。特にパリの母子保健システムや子育て支援システムに関して、インタビューを含む現地調査を行う。一方で令和2年の世界状況(新型コロナウィルスの世界的な流行)を鑑み、今後長期間にわたって渡航制限のかかる可能性もあるため、国内での調査も追加して行う予定である。内容としては、国内の在日外国人、および在留邦人乳幼児家庭の日本への一時帰国時の子育て支援の実態を市区町村の保健センターや子育て支援センター、等にインタビュー調査を実施する予定である。 また、1年目の調査結果、および今年度の調査を踏まえ、パリ在住の日本人家庭の子育て支援ニーズに関する大規模質問紙調査を実施し、日本人家庭の乳幼児子育ての全体像と支援状況及び支援ニーズについてまとめる。ただし、現段階で外出禁止令の出ているフランス、パリ地域での子育て支援に関する保護者への調査は、平時における子育て環境からみると、相当ストレスフルな状況であり、調査結果に相当のバイアスがかかる可能性も考えられることから、質問紙調査の実施時期については、次年度以降への変更も検討する。
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