2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス在住の日本人家庭における乳幼児親子の子育て支援に関するモデル研究
Project/Area Number |
19K14157
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
田尻 由起 東洋大学, ライフデザイン学部, 助教 (90802249)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 子育て支援 / 家庭支援 / 乳幼児親子 / 障害乳幼児親子 / 在留邦人 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、特に重点を置いて実施したのは、パリ近郊地域の日本人家庭の子育ての実態を把握すること、またパリ在住の日本人家庭の子育て支援ニーズを把握することであり、2019年度の研究成果に基づき、データ分析を中心に実施した。主な内容は①パリ在住の障害乳幼児の子育てをしている保護者の子育ての実態とその支援ニーズの分析、また②障害乳幼児親子を支援する日系専門家(個人、団体)に対して、支援実態と支援の難しさに関する分析である。 ①ではパリに在住の障害乳幼児の親子の子育ての実態として、『フランスでの子育てに関する肯定的な捉え』『フランスでの子育てに対する不安・戸惑い・困り感』『言語・文化的障壁による情報収集・利用の制限』『パリに住む邦人家庭障害乳幼児親子の子育て支援ニーズ』が示された。パリでの子育てを肯定的に捉えつつも子育てに関する社会的資源については不安や戸惑いを感じていた。また支援ニーズとして言語的な支援の必要性、日本の医療や子育てに関する情報提供、発達に関する日本人専門家の存在が挙げられた。特に在留邦人であるが故の支援の脆弱さが、子育て困難さを増幅させ、邦人同士がつながりを持つための場と機会の提供は重要課題であることが示された。 ②の支援を実施する専門家の支援実態と支援の難しさついては、『支援に関する運営課題』『支援者からみるパリ在住邦人家庭ゆえの支援の難しさ』『パリ在住邦人家庭障害乳幼児親子の支援に関する課題』が示された。運営資金や人材の不足は、よりよい支援を阻む要因になる一方で支援者は積極的に支援に取り組み、良い支援を追求し、「日本人だから」「ここはフランスだから」という固定概念を取り払い、目の前の邦人障害乳幼児親子に真摯に向き合っている姿が伺えた。 その他、現地調査を国内調査へ変更し、在留邦人家庭への子育て支援の実態について、主に乳幼児健康診査を通した支援に関する調査を実施中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界的な新型コロナウィルスの流行の影響を受け、現地での調査が実施できず、研究全体のデザインの変更を行っているところである。そのため、最終的な「パリに住むの在留邦人家庭の子育て支援の在り方」を検討するために必要な調査及び研究について、国内でできることを中心に再度研究をデザインし、立て直しをしながら研究を進めているため、全体的に遅れ気味である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度も引き続き、フランスへの渡航が難しい状況であることと想定し、全体的な研究のデザインの変更する。具体的な調査の変更点としては以下の2点である。①子育て支援に関する現地調査(訪問調査及びインタビュー等)が出来ないことを念頭に、国内の調査へ変更する。その際、在留邦人への支援と在日外国人への子育て支援を母子保健分野の観点から分析することを追加で行う予定である。ただし現地の支援システム(リソース)については、資料収集等の可能な部分も多いため、引き続き実施することとする。②パリ在住の日本人家庭の子育て支援ニーズに関する質問紙調査を中止し、インタビュー調査へと変更する。より個別の事例を通して、パリ在住の日本人家庭の子育て困難感に関するデータを収集する。 今年度は最終年度であるため、これまでの2年間の成果、また今年度の成果を合わせて、パリ在住の日本人家庭の子育て支援の在り方、支援パッケージについて総合的に検証していくこととする。
|
Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウィルスの流行を受け、予定していたフランスへの渡航が出来なかったために、調査も不可能となり、予定していた必要予算を使用することが出来なかった。 2021年度においては、研究計画を見直しフランスで予定していた調査を国内調査研究へ一部変更する予定であるため、そのための予算とする。また年度後半、状況が改善に向かった場合、一部追加の調査、およびこれまでの研究の成果報告のための渡仏を予定しており、そのために使用する予定である。
|