2022 Fiscal Year Research-status Report
保育絵本をめぐる社会関係の史的分析―1950年代~1960年代を中心に
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19K14162
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Research Institution | Osaka University of Comprehensive Children Education |
Principal Investigator |
井岡 瑞日 大阪総合保育大学, 児童保育学部, 准教授 (20836449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 月刊保育絵本 / 『ひかりのくに』 / 『保育』 / 豊田次雄 / 絵本 / 幼児童謡 / 幼児童話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1950~1960年代の月刊保育絵本『ひかりのくに』に着目し、その普及のプロセスを同シリーズをめぐる様々な立場の大人や子どもの社会関係に着目しながら明らかにしようとするものである。 2022年度は2021年度に引き続き、版元の昭和出版から刊行された『ひかりのくに』、『保育』、『月刊保育とカリキュラム』、その他別冊付録や各種単行本等の史・資料調査を進め、左記3誌の初代編集長を務めた豊田次雄に照準して整理・検討を進めた。その結果、①豊田は戦前からジャーナリストや童謡・童話作家、口演童話家、保育園経営者として幅広く活動し、その延長線上に『ひかりのくに』の編集者としての仕事が位置づけられること、②1960年代までの『ひかりのくに』が、そうした豊田の活動を通じて得た社会資源を活用してつくられ、宣伝されていた側面をもつこと、③以上をふまえて、同シリーズが童謡・童話中心から物語絵本中心へと移行する中で、幼児向けの童謡・童話、絵本の保育への活用を促す役割を果たしたこと、の3点が明らかとなった。以上については、絵本学会第25回大会で発表し、2023年度に論文投稿できるよう準備を進めてきた。 また、2023年度の活動に向けた予備調査として、出版社が園を通じた保護者の年間契約を獲得するためにどのような営業戦略をとっていたのかを検討すべく、他誌の動向もあわせて把握できるよう関連資料の収集と整理を再開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
秋口よりの新型コロナウイルス第8波の到来など社会情勢が影響して、前年度に引き続き、資料調査の範囲やかけられる時間に制約を受ける状況が続いた。一部計画を後ろ倒しにしてできる範囲で調査を進めてきたが、成果の発表に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
一つに、豊田次雄の活動歴と創刊後初期の『ひかりのくに』の歴史的位置づけについて補完的な調査を行いつつ、論文を執筆、投稿する。 二つに、月刊保育絵本がどのような経緯から社会に普及していったのかを明らかにするために、昭和出版がいかなる戦略のもと顧客を獲得し、販売地域を拡大していったのかについて、刊行資料や社内資料を用いた文献調査と関係者への聞き取り調査を行い、学会での成果報告につなげる。
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Causes of Carryover |
計画の変更による研究がやや遅れているためと、社会情勢による学会発表のオンライン化により、宿泊を伴う遠方への移動が生じなかったため。 2023年度は図書購入費に加え、学会大会への出張費や国内(関東方面)の資料調査の旅費等に使用する予定である。
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